AI概要
【事案の概要】 本件は、セレコキシブ(シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤として用いられる抗炎症薬の有効成分)を含む製薬組成物に関する特許(特許第3563036号、発明の名称「セレコキシブ組成物」)について、原告ら(日本ケミファ株式会社ほか)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が審判請求は成り立たないとする審決をしたため、原告らがその取消しを求めた事案である。本件特許の請求項1は、薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた微粒子セレコキシブを含み、粒子の最大長においてセレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する製薬組成物を規定するものであった。原告らは、先行文献である甲1(セレコキシブの体内動態に関する学会抄録)及び甲2(セレコキシブの合成方法等を開示する公表特許公報)を主引用例として、本件発明には進歩性がないと主張した。 【争点】 主な争点は、(1)甲1発明の認定の誤り及び手続違背の有無、(2)甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性判断(相違点1−1及び1−2の容易想到性)の誤りの有無、(3)甲2を主引用例とする本件発明1の進歩性判断(相違点2−1の容易想到性)の誤りの有無である。特に、セレコキシブの微細化条件を「粒子の最大長においてD90が200μm未満」と規定することが、周知技術の適用による単なる設計事項にすぎないか否かが核心的争点であった。 【判旨】 知財高裁は、原告らの請求をいずれも棄却し、審決を維持した。まず、甲1発明の認定について、甲1に「目的」として記載された事項を発明特定事項として認定したことに誤りはないとした。手続違背の主張についても、審判合議体が認定する引用発明の内容を事前に通知するかどうかは審判指揮の裁量に委ねられており、相違点自体は異ならないから不意打ちには当たらないとした。相違点1−2及び相違点2−1の容易想到性について、裁判所は、甲1及び甲2にはセレコキシブの微細化条件を「D90粒子サイズ」で規定することについての記載も示唆もなく、粒度分布を平均粒子径ではなくD90で特定することが医薬品の原料粉末で一般的であったと認めるに足りる証拠もないとして、当業者がセレコキシブの粒子サイズを小さくすることに思い至ったとしても、D90が200μm未満とする構成を採用する動機付けは認められないと判断した。