AI概要
【事案の概要】 広島市内の木造2階建てビル1階の飲食店「B」の店長であった被告人が、平成27年10月8日午後9時40分頃、店内の階段東側スペース(ごみ置き場として使用)で1匹のゴキブリを発見し、駆除のためにアルコール製剤をガスバーナーの火炎で点火しながらトリガーボトルで2回噴霧する「火炎放射行為」を行い、さらに床に落ちたゴキブリに向けてアルコール製剤を2、3回噴霧した。被告人は以前からこの方法でゴキブリ駆除を行っており、大きな噴霧火炎が生じることを認識していた。同スペースには段ボール箱、発泡スチロール箱、廃油入りのペール缶等の可燃物が存在していた。この一連の行為により段ボール等に引火して火災が発生し、ビルが全焼するとともに、2階のメイドカフェ等にいた3名が急性一酸化炭素中毒等で死亡し、3名が気道熱傷等の重傷を負った。被告人は重過失失火、重過失致死傷の罪で起訴された。 【争点】 本件の争点は、(1)被告人の一連の行為と火災及び死傷結果との間の因果関係の有無、(2)被告人に重過失が認められるかの2点であった。弁護人は、段ボール箱に着火する可能性が証明されていないこと、出火箇所が被告人の行為場所と異なること、第三者による放火の可能性等を主張して因果関係を争い、また、過去に火炎放射行為で火災が発生したことがなく危険性を予見できなかったとして重過失を争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、燃焼工学の専門家による理論的検討及び再現実験の結果から、火炎放射行為による噴霧火炎や床面に滞留したアルコールの液面燃焼により段ボール箱に着火する可能性があると認定した。出火箇所が被告人の行為場所と一致し、出火時刻も近接していること、漏電・ガス漏れ・たばこ等による出火可能性がないこと、第三者による放火も極めて困難であったことから、因果関係を肯定した。重過失については、可燃物の近くで大きな火炎を生じる行為を行えば着火の危険性があることは容易に予見でき、木造建物内で火災が発生すれば死傷結果が生じることも容易に予見できたとして、重過失を認定した。量刑においては、過失行為によって出火して火災に至る客観的な危険性はガソリン等が原因の事案と比べて大きいとはいえないこと、2階からの避難が困難な建物構造や防災管理の不備が死傷結果に寄与したこと、被告人が速やかに119番通報し消火・避難誘導を行ったこと等を考慮し、禁錮3年・執行猶予5年を言い渡した(求刑:禁錮4年)。