AI概要
【事案の概要】 食品包装用容器の製造販売業者である被控訴人(一審原告)は、焼売用容器について意匠権(本件意匠権)を有していた。被控訴人は、特定の取引先である浪漫亭に対し、長年にわたり焼売用容器(原告製品)を独占的に納入していた。ところが、一審被告静岡産業社が浪漫亭との取引に参入を図り、控訴人(一審被告ヨコタ東北)に指示して、原告製品と類似する底部形状(X字状の突条)を持つ焼売用容器(被告製品)を製造させ、平成28年1月から浪漫亭に販売した。被控訴人は、被告製品が本件意匠と類似し意匠権を侵害するとして、一審被告静岡産業社及び控訴人に対し、共同不法行為に基づく損害賠償を求めた。原審は約5888万円の連帯支払を認容し、控訴人が控訴、被控訴人が附帯控訴した。なお、原判決後に一審被告静岡産業社は被控訴人と和解し、認容額の半額相当である約2944万円を支払った。 【争点】 主な争点は、(1)本件意匠と被告製品の類否、(2)意匠登録の無効(新規性欠如・創作容易性)、(3)黙示の実施許諾の有無、(4)権利濫用・信義則違反、(5)控訴人の過失の有無、(6)共同不法行為の成否、(7)損害額の算定であった。特に控訴審では、控訴人側が黙示の実施許諾と過失推定の覆滅を、被控訴人側が値下げ前単価に基づく損害算定と値下げ損害の別途賠償を新たに主張した。 【判旨】 大阪高等裁判所は、原審の判断を基本的に維持し、控訴人の主張をいずれも退けた。黙示の実施許諾については、2社購入の取引形態や浪漫亭の製造ラインへの適合の必要性があったとしても、被告製品の形状を本件意匠に類似させる必然性はなく、被控訴人は一審被告静岡産業社による競合製品を容認しない姿勢を明確に示していたとして否定した。過失については、意匠法40条による過失の推定を覆すには、当業者としての専門的注意能力を基準に予見義務違反又は結果回避義務違反の不存在を立証する必要があるところ、控訴人は他人の知的財産権を侵害しないよう調査する注意義務を負い、本件意匠権の調査も十分可能であったとして、推定の覆滅を認めなかった。損害額については、意匠法39条1項に基づく推定損害額約5348万円に弁護士費用等540万円を加えた約5888万円を維持しつつ、値下げ損害の別途賠償は、侵害前の単価を前提に損害額が算定されているため既に反映済みであるとして認めなかった。結論として、一審被告静岡産業社の弁済分を控除した残額約2944万円の支払を命じた。