AI概要
【事案の概要】 本件は、発光装置(LED等)の製造方法に関する特許(特許第6056934号、発明の名称「発光装置、樹脂パッケージ、樹脂成形体並びにこれらの製造方法」)について、特許無効審判の請求不成立審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。原告(東芝映像ソリューション株式会社)は、被告(日亜化学工業株式会社)の本件特許に対して無効審判を請求したが、特許庁は訂正を認めた上で審判請求は成り立たないとする審決をした。原告は、9個の無効理由のうちサポート要件違反(特許法36条6項1号)についてのみ審決の判断を争った。本件特許の発明は、リードフレームに切り欠き部を設け、熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして樹脂成形体を形成し、切断により複数の発光装置に分離する製造方法に関するものである。 【争点】 主な争点は、本件発明がサポート要件を充足するか否かであり、具体的には以下の2点が争われた。第1に、本件明細書に記載された3つの課題(①リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性向上、②短時間での多数個製造、③廃棄ランナーの低減)がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的な課題であるか否か、及びトランスファ・モールドが特許請求の範囲で特定されていないことがサポート要件違反となるか。第2に、請求項1の「樹脂成形体付リードフレーム」が金型を用いない製造方法をも包含するため、明細書の開示範囲を超えているか否かである。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却し、本件審決の判断に誤りはないとした。取消事由1について、裁判所は、上記3つの課題はそれぞれ別個の課題であり、トランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的な課題ではないと判断した。その理由として、トランスファ・モールドを採用するだけでは直ちに上記3つの課題が解決されるものではないこと、トランスファ・モールドは金型を用いた成形の一態様にすぎず、これらの課題はトランスファ・モールドの場合に限って生ずるものではないことを指摘した。そして、請求項1の記載には、①切り欠き部の構成による密着性課題の解決手段、②樹脂成形体付リードフレームの個片化による多数個同時製造の解決手段、③多数個同時製造によるランナー低減の解決手段がそれぞれ反映されており、サポート要件を充足すると認定した。取消事由2について、裁判所は、辞書における「成形」の語の一般的意義を検討し、「成形」には金型を用いることが想定されていると認定した上で、請求項1の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」には金型の使用が含意されており、金型が明記されていないことはサポート要件違反とならないと判断した。