AI概要
【事案の概要】 本件は、茶道の流派「織部流」の第18代家元である原告が、被告(Y美術館)による「織部流」の商標登録(第5986804号)について無効審判を請求したところ、特許庁が指定役務の一部(茶道の教授、茶会の企画・運営又は開催)についてのみ登録を無効とし、その余の指定役務(セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、図書及び記録の供覧、図書の貸与、美術品の展示、書籍の制作、興行の企画・運営又は開催)については審判請求不成立とした審決の取消しを求めた事案である。 「織部流」は、戦国武将・古田織部を流祖とする武家茶道の流派であり、明治初期に第14代が「古織流」から「織部流」に改称して一流派を立てた。原告は昭和57年から興聖寺住職として第18代家元を務め、門下の古織会を通じて全国で茶道の教授や茶会の開催等を行ってきた。一方、被告の代表者は、かつて織部流に入門した経歴を持つが、古田織部好みの茶道具を展示する美術館を運営する人物であり、平成28年に「織部流」を商標登録出願していた。 【争点】 ①審決が不成立とした各指定役務について、引用商標「織部流」が商標法4条1項10号(周知商標との同一・類似)に該当するか、②本件商標が同項7号(公序良俗違反)に該当するか。 【判旨】 知財高裁は、審決の判断を一部取り消した。まず10号該当性について、「織部流」は遅くとも昭和60年頃までに茶道愛好者等の間で広く認識されていたと認定した上で、各指定役務を個別に検討した。「セミナーの企画・運営又は開催」は茶道の教授が講習会形式で行われ得ることから類似役務と認め、「興行の企画・運営又は開催」は茶会が興行の一種であるとして類似役務と認めた。「図書及び記録の供覧」「図書の貸与」「書籍の制作」については、織部流の家元や師範が実際に書籍を制作・供覧等してきた事実から周知性を認め、「電子出版物の提供」もこれらと類似の役務と判断した。他方、「美術品の展示」については、織部流が行ってきたのはあくまで茶会であり、茶道具の鑑賞が茶会の目的に含まれるとしても「美術品の展示」とは異なるとして、10号該当性を否定した。 7号(公序良俗違反)については、被告代表者が原告の織部流に入門歴があり10号該当事由を認識していたと認めつつも、10号に該当する役務は同号を理由に無効とされるのであり、残る「美術品の展示」について登録を許容すべきでないほどの反社会性は認められないとして、該当性を否定した。 結論として、審決のうち「美術品の展示」を除く6つの指定役務について不成立とした部分を取り消し、原告のその余の請求(美術品の展示及び7号に基づく請求)は棄却した。