不正作出支払用カード電磁的記録供用,窃盗
判決データ
- 事件番号
- 令和1う412
- 事件名
- 不正作出支払用カード電磁的記録供用,窃盗
- 裁判所
- 福岡高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年11月6日
- 裁判種別・結果
- 破棄自判
- 裁判官
- 鬼澤友直、中牟田博章
AI概要
【事案の概要】 南アフリカ共和国の銀行が発行したデビットカードの電磁的記録を不正に作出した偽造カード46枚を使用し、平成28年5月15日、福岡県・長崎県・佐賀県のコンビニエンスストア72店舗に設置されたATMから、783回にわたり合計7830万円を窃取したという、高度に組織的・計画的な不正引出し事件である。首謀者Aが東京から計画を指揮し、多数の実行犯が九州北部で一斉に犯行を敢行した。被告人は、Aの「九州の兄貴」と呼ばれる人物であり、犯行後に窃取金の中から190数万円を受領していたが、一貫して犯行への関与を否認し、受領した金銭はAからの借金返済であると主張した。一審は、検察官が主張する各間接事実をいずれも共謀の推認に不十分と判断し、無罪を言い渡した。これに対し、検察官が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 被告人とAら共犯者との間に、本件犯行についての共謀関係が成立していたか否か。特に、間接事実の評価方法として、個々の間接事実を個別に検討してそれぞれの推認力を否定する手法が適切か、それとも複数の間接事実を総合的に評価すべきかが争われた。 【判旨(量刑)】 福岡高裁は原判決を破棄し、被告人を懲役10年に処した。高裁は、原判決の事実認定手法を厳しく批判した。すなわち、原審は検察官が主張する個々の間接事実について「それだけでは共謀を推認できない」と繰り返し説示するにとどまり、複数の間接事実を総合評価するという不可欠な検討を一切欠いていた点が、論理則・経験則に照らして不合理であると判断した。高裁が総合評価の対象とした間接事実は、(1)犯行1〜2か月前のAによる「九州の兄貴に人を集めてもらう」等の発言、(2)犯行前々日深夜に被告人が主要共犯者全員と合流していたこと、(3)犯行前後にわたる被告人と犯行関与者との間の頻繁な電話連絡、(4)不正カード授受の際に被告人がAとBの間に入って連絡を仲介していたこと、(5)窃取金7830万円の約2.5%に相当する190数万円の受領、(6)犯行発覚後の「俺は捕まらんけん。状況証拠しかない。」との発言である。高裁は、これらの事実が同時的に連なって存在し、相互に推認力を相乗的に強め合うことで、被告人がAらと事前に共謀を遂げていたと解さなければ合理的な説明が不可能ないし極めて困難な事実関係が形成されていると認定した。量刑については、高度に組織的・計画的かつ大胆な財産犯であり窃取総額が7830万円と高額であること、被告人がAの上位者として実行犯確保の段取りに関わりながら自らは手を汚さなかったこと、累犯前科があること等を考慮した。