AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成31年3月、大阪府岸和田市の自宅において、覚せい剤約0.153グラムを所持するとともに(共犯者と共謀の上、大麻約0.668グラムも所持)、覚せい剤を自己の身体に注射して使用した。被告人には同種の薬物事犯による執行猶予中の前科があり、薬物依存から脱却できていない状況にあった。 さらに被告人は、上記薬物事件で裁判が係属中、保釈条件の不遵守により保釈を取り消され、身柄拘束のため警察署に連行される途中、片手に手錠をつけたまま逃走した。令和元年11月9日、被告人は知人Cの居宅に逃げ込み、Cに対し「地元には行けない」「頼る人もいない」「助けてほしい」と依頼した。Cは被告人の手錠を工具で解錠し、自宅に匿い、別のマンションに車で移動させ、現金4000円やiPadと交換して入手した携帯電話を提供し、最終的には自動車まで貸し与えた。被告人はその車を無免許で運転して逃走を図った。 【争点】 犯人蔵匿・隠避教唆の成否が争われた。弁護人は、①Cが被告人を匿う意思を生じたのは被告人の働きかけによるものではなく教唆犯は成立しない、②被告人には教唆の故意がない、と主張して無罪を求めた。 裁判所は、証人Cの供述について、被告人に不利益な事実をあえて供述する動機がなく、当時被告人らと行動を共にしていたAの供述とも整合し、具体的な心情を交えた自然な内容であるとして信用性を認めた。その上で、Cはもともと被告人が来るかもしれないと考え玄関の鍵を開けていたものの、匿う意思を確定的に生じたのは被告人から直接「助けてほしい」と頼まれたからであり、Cの一連の行動は自発的なものではなく、被告人の言動を契機としてその都度決断を迫られたものと認定した。以上から、犯人蔵匿・隠避の各行為はいずれも被告人の教唆に基づくものであると判断し、弁護人の主張を排斥した。 【判旨(量刑)】 被告人を懲役3年6月に処した(求刑懲役4年6月)。裁判所は、量刑の中心は覚せい剤の所持及び使用の罪であるとし、同種薬物事犯の執行猶予中に再び犯行に及んだ点から規範意識の低さは明らかであると指摘した。加えて、裁判係属中に保釈取消後の逃走、犯人蔵匿教唆、無免許運転と犯行を重ねたことについて、刑事手続を軽視した身勝手な行動であると厳しく評価し、刑の一部執行猶予を付すことは考えられないとした。被告人の反省等の有利な事情を考慮しても、実刑が相当であると判断した。