AI概要
【事案の概要】 原告(トラタニ株式会社)は、「ショーツ等の衣料」に関する特許出願(特願2017-46358号)について拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求したが、特許庁は「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。本願発明1は、ショーツ等の身頃を展開した状態で、背面覆い部分の後中心線が前面覆い部分の前中心線に対して「下方窄まり」の状態に設定されており、その開始位置が「臀部の頂上部よりも上側」であることを特徴とする。審決は、本願発明1は引用文献1(特開2010-84292号公報)に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるとして、特許法29条2項により特許を受けることができないと判断した。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 引用文献1を主引用例とする本願発明1の進歩性の判断の誤り(相違点1の容易想到性)が争点となった。相違点1は、「下方窄まり」の状態に設定されている領域の開始位置が、本願発明1では「臀部の頂上部よりも上側から」であるのに対し、引用発明では臀部の頂上部との位置関係が明らかでない点である。原告は、臀部の頂上部よりも上側から下方窄まりにすることで生地が臀部を上方に持ち上げる作用効果を奏するため容易想到でないと主張し、被告は設計上の事項にすぎないと反論した。 【判旨】 知財高裁は原告の請求を棄却した。まず、本願明細書には「下方窄まり」の開始位置を「臀部の頂上部よりも上側」とすることの技術的意義について述べた記載はなく、原告主張の「上向き効果」(臀部の頂上部を持ち上げる作用)についても記載も示唆もないとして、原告の主張は明細書の記載に基づかないものと判断した。次に、引用文献1の記載から、引用発明の「下方窄まり」の開始位置には臀部の頂上部が含まれるとみるのが自然であり、人体の臀部は滑らかな湾曲形状で頂上部は尖ったものでなく、着用者の体形には個人差があることに照らすと、開始位置を「臀部の頂上部」から多少上下させることは当業者が適宜選択すべき設計的事項であると認定した。したがって、相違点1の容易想到性を肯定した審決の判断に誤りはないと結論づけた。