AI概要
【事案の概要】 被相続人(死亡時89歳)の相続人である原告らが、被相続人の相続により取得した横浜市所在の賃貸マンション(土地及び建物。以下「本件不動産」)について、財産評価基本通達(評価通達)の定めに基づき約4億7761万円と評価して相続税を申告したところ、処分行政庁が、評価通達の定めにより評価することが著しく不適当であるとして、不動産鑑定評価額10億4000万円を基に更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、原告らがその取消しを求めた事案である。 本件不動産は、法人向けの単身者用高級賃貸マンションで、ジムやサウナ等の共用設備、食事サービス等が充実した収益性の高い物件であった。被相続人は、相続開始の約2か月前に15億円で本件不動産を購入し、千葉銀行から15億円を借り入れていた。この購入により、通達評価額と借入金の差額分だけ課税価格が圧縮され、相続税の総額は約1436万円となったが、本件不動産を購入しなかった場合の相続税総額は約3億3217万円であり、約3億1780万円もの節税効果が生じていた。 【争点】 本件不動産について、評価通達の定めによらず不動産鑑定評価額により時価を算定すること(いわゆる「総則6項」の適用)が許されるか。原告らは、通達評価額と取引価格のかい離は他にも存在し本件は特殊でないこと、不動産購入には経済的合理性があったこと、事後的に鑑定評価で課税することは租税法律主義に反することなどを主張した。また、被告側の不動産鑑定評価について、開発法の不適用、取引事例の不適格性、公示価格との過大なかい離、市場性修正率の恣意性、収益還元法における賃料査定の不合理性など、多岐にわたる問題点を指摘した。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。まず、評価通達の定める画一的な評価方法を用いることが原則であるとしつつ、形式的な平等を貫くことによりかえって租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな「特別の事情」がある場合には、他の合理的な方法による評価が許されるとの一般論を示した。 その上で、本件では、通達評価額(約4億7761万円)と鑑定評価額(10億4000万円)との間に著しいかい離があり、課税額にも大幅な差が生じていること、被相続人及び原告が銀行担当者と相続税対策について相談を重ね、被相続人が肺がんり患の発覚後に不動産購入を急ぎ、相続税の圧縮効果を認識・期待して本件不動産の取得及び借入れを実行したことを認定し、これらの事情から「特別の事情」の存在を認めた。原告らの鑑定評価の手法に対する批判(開発法の不適用、取引事例の選択、公示価格とのかい離等)についてはいずれも排斥し、鑑定評価額の合理性を肯定した。また、租税法律主義違反の主張についても、相続開始の2か月前に15億円で購入しており通達評価額と時価のかい離は十分認識可能であったとして退けた。