AI概要
【事案の概要】 原告(弁護士)は、東京地検特捜部において任意の取調べを受けていた被疑者Aについて、Aの妻からの依頼を受け、弁護人となろうとする者としてAとの面会を求めた。これに対し、主任検察官であるD検察官は、原告がAの妻から正式に依頼を受けた弁護士であるかの確認ができないとして、約2時間にわたりAに原告の来訪を伝えず、面会を実現させなかった。なお、Aは有限会社の共同代表取締役であり、売上金の着服横領の被疑事実で捜査対象となっていたところ、前日の捜索差押えで居室から2億円超の現金が発見押収され、A及びその妻の携帯電話も押収されていた。Aは妹から借りた携帯電話で原告の事務所に連絡しており、原告はその電話番号をD検察官に伝えたが、D検察官は当該番号の使用者特定作業に終始し、取調べ終了までA本人への確認を行わなかった。原告は、この対応が接見交通権の侵害にあたり違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料200万円を請求した。 【争点】 原告がAとの面会を要求したのに対し、D検察官が直ちに面会を実現させなかったことの違法性及び損害の有無。具体的には、身体拘束を受けていない任意取調べ中の被疑者について、弁護人となろうとする者の面会権が認められるか、また、弁護人選任権者からの依頼の確認方法として、D検察官の対応が合理的な範囲内であったかが問題となった。 【判旨】 裁判所は、まず身体拘束を受けていない被疑者に対する弁護人等の面会権について重要な判断を示した。任意取調べ中の被疑者であっても、弁護人等との面会予定を事前に把握しているなどの特段の事情がない限り、取調べ中に自由に退去して弁護人の援助を受けることは困難であり、弁護人等の来訪の告知を受けて初めて実質的な弁護を受ける権利が保障されるとした。したがって、捜査機関は、弁護人等から面会の申出があった場合には、取調べを中断し、速やかに来訪を被疑者に伝え、面会実現のための措置をとるべき義務を負うと判示した。もっとも、弁護人選任権者からの依頼の確認は許されるが、合理的な時間内に適切な方法で行うべきであり、疎明が不完全な場合でも被疑者本人への確認を含めて検討すべき義務があるとした。本件では、D検察官は携帯電話番号の使用者特定という迂遠な方法に終始したが、A本人に当該番号の認識の有無や当日午前中の架電先を確認すれば足り、それは取調べ終了後に現にD検察官自身が行った方法と同一であると指摘した。結論として、D検察官の不作為は社会通念上相当と認められる範囲を超え違法であると認定し、慰謝料10万円の限度で原告の請求を認容した。