AI概要
【事案の概要】 控訴人(一審原告)は、パチンコ店向けにホームページ制作やゲームコンテンツの開発・販売等を行う個人事業者である。控訴人は「X1」「X3」と称するパチンコ店向けの集客用ゲームコンテンツを開発・販売していた。これらは、メールやSNSを通じて顧客にスロットゲーム等を促し、「大当たり」の当選画面に特定の遊技機を示唆する画像等を表示することで、パチンコ店への来店を誘引するものであった。 被控訴人(一審被告)は、東京都や神奈川県等で14店舗のパチンコ店を運営する株式会社である。平成30年10月、埼玉県警察が実施した管理者講習会に被控訴人の店長P4が出席し、風営法に基づく広告宣伝規制について説明を受けた。講習会では控訴人の商品名は明示されなかったが、P4は講習内容を社内のLINEグループ(店長ライン)に「名指しでX1は禁止」等と要約して送信した。さらに別の店長P5がこのメッセージを外部の取材会社に転送し、控訴人の商品が禁止されたとの情報がパチンコ業界に流布した。 控訴人は、これらの行為が不正競争防止法2条1項15号(営業誹謗行為)に該当し、また不法行為に当たるとして、被控訴人に対し4764万円の損害賠償及びウェブサイトへの謝罪文掲載を求めた。原審(大阪地裁)は請求を棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)控訴人と被控訴人が不正競争防止法上の「競争関係」にあるか、(2)本件メッセージの内容が「虚偽の事実」に当たるか、(3)不法行為責任及び使用者責任の有無であった。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、まず「競争関係」について、控訴人はパチンコ店向け販促ツールの開発・販売業者、被控訴人はパチンコ店の運営会社であり、被控訴人は控訴人の顧客の立場にあって同種の商品・役務を提供する関係にはないと判断した。控訴人は、被控訴人のグループ会社である訴外シティデザインが控訴人と競合する事業を行っていると主張したが、裁判所は、被控訴人と訴外シティデザインは事業内容を異にし実質的に同一とはいえないこと、訴外シティデザインの商品はパチンコ業界と直接関連しないことから、競争関係を否定した。 次に「虚偽の事実」について、裁判所は、講習会で控訴人の商品名は明示されなかったものの、埼玉県警察の説明内容は実質的に控訴人の商品を例にしたものであったと認定した。P4は、映写された当選画面が「X1」の画面と酷似していたことから控訴人の商品を対象とする説明と認識したものであり、店長ラインの構成員に対し規制内容を迅速かつ分かりやすく共有する必要性から「名指しで」と端的に表現したにすぎないとして、「虚偽の事実」には当たらないと判断した。不法行為責任についても、原審の判断を維持し、P4の送信行為及びP5の転送行為はいずれも不法行為を構成しないとした。