選挙無効請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日に施行された参議院議員通常選挙について、41選挙区の選挙人である上告人らが、公職選挙法14条・別表第3の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるとして、選挙無効訴訟を提起した事件である。参議院の選挙区間における投票価値の較差(いわゆる一票の格差)をめぐっては、最高裁大法廷が平成24年判決・平成26年判決で「違憲状態」と判断し、都道府県を単位とする選挙制度の仕組み自体の見直しを求めてきた。これを受けて平成27年改正で4県2合区が初めて導入され、最大較差は約5倍から約3倍に縮小した。その後の平成30年改正では、合区を維持しつつ埼玉県選挙区の定数を2人増員したが、選挙制度の基本的な仕組み自体は変更されなかった。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった。 【争点】 平成30年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったか否か。 【判旨】 最高裁大法廷は、上告を棄却した。投票価値の平等は憲法上の要請であるが、選挙制度の決定は国会の裁量に委ねられており、投票価値の平等は唯一絶対の基準ではなく、他の政策的目的との関連で調和的に実現されるべきものであるとした。平成30年改正は、選挙区選出議員に関する基本的な仕組み自体を変更するものではなく、較差是正の取組が大きな進展を見せているとはいえないとしつつも、合区の解消を強く望む意見が存在する中で合区を維持し、僅かではあるが較差を是正しており、平成27年改正における方向性を維持するよう配慮したものと評価した。また、参議院選挙制度の改革は事柄の性質上慎重な考慮を要し、その実現は漸進的にならざるを得ない面があるとして、較差の是正を指向する姿勢が失われたとは断じられないとした。以上を総合し、本件選挙当時の投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえず、本件定数配分規定は憲法に違反するに至っていたとはいえないと判断した。ただし、立法府に対し、較差の更なる是正と、それを持続していくための方策について議論と取組を進めることを求めた。 【補足意見】 三浦守裁判官は、投票価値の不均衡は違憲状態にあったと考えるが、平成29年大法廷判決を前提とすると国会が違憲状態を具体的に認識する事情があったとは認め難く、国会の裁量権の限界を超えるとまではいえないとして、結論において多数意見に賛同した。草野耕一裁判官は、最大較差に代わる指標としてジニ係数を用い、投票価値の不均衡による具体的不利益の立証がなされた場合に違憲状態と捉え直す「条件付き合憲論」を提唱した。林景一裁判官、宮崎裕子裁判官及び宇賀克也裁判官はそれぞれ反対意見を述べ、最大較差3倍は著しい不平等であり、平成30年改正は制度の抜本的見直しに至っておらず、本件定数配分規定は違憲であるとした。