特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、白色LEDの基本特許を保有する一審原告(日亜化学工業)が、一審被告(東芝映像ソリューション)に対し、一審被告が輸入・販売した液晶テレビ(32型デジタルハイビジョンテレビ)に搭載されたLEDが、発光装置に関する特許権3件(本件特許権1〜3)を侵害するとして、特許法100条に基づく差止め・廃棄及び民法709条に基づく損害賠償(約1億3200万円)を求めた事案の控訴審である。一審原告の特許権1は、青色LEDチップとYAG系蛍光体を組み合わせて白色光を実現するという画期的な発明に関するもので、「LED時代」を築いた基本特許として業界で広く知られている。特許権2及び3は、リードフレームと熱硬化性樹脂の密着性を向上させ、生産効率の大幅な向上と安価な発光装置の提供を可能にする製造方法及び装置に関するものである。一審被告製品はOEM製品であり、一審被告は搭載されたLEDの単価やメーカーすら把握していなかった。原審は損害賠償請求を約1795万円の限度で認容したところ、双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、①侵害論として、「リード」の意義、サポート要件違反の有無、進歩性欠如の有無、②損害論として、特許法102条3項に基づく損害額の算定における実施料率の基礎(ロイヤルティベース)をLED単価とすべきか製品全体の売上げとすべきか、及び具体的な実施料率であった。一審被告は、LED1個あたり約9円を基礎に実施料率0.033%を適用すべきで損害額は約5万円にとどまると主張した。一方、一審原告は、製品全体の売上げを基礎に実施料率0.5%を適用し約1億2466万円の損害を主張した。 【判旨】 知財高裁は、侵害論について原審の判断を維持し、一審被告の補充主張をいずれも排斥した。「リード」の意義については、明細書の記載から個片化前のリードフレームが切断により「リード」となるものと解すべきとし、サポート要件違反及び進歩性欠如の主張も退けた。損害論については、①本件LEDは直下型バックライトに搭載され一審被告製品の基幹的部品であり容易に分離できないこと、②LEDの性能は液晶テレビの画質や製造コストに大きく影響すること、③一審被告は本件LEDの特性を活かした完成品として販売し収益を得ていたこと等から、LED単価ではなく一審被告製品の売上げをロイヤルティベースとすべきと判断した。実施料率については、一審原告の和解実績(LED電球事案で売上高の10%)、白色LEDメーカーとしてのシェア第1位の地位、YAG系蛍光体の市場優位性、一審原告のライセンス方針等を総合考慮し、LED単体の実施料率は10%を下回らないとした上で、多数の部品から構成されるテレビ全体の売上げに対する実施料率は0.5%を下回らないと認定した。その結果、総売上高約249億円に0.5%を乗じた約1億2466万円に弁護士費用1200万円を加えた損害額が一審原告の請求額を上回るとして、一審原告の請求全額(1億3200万円)を認容し、原判決を変更した。