AI概要
【事案の概要】 原告会社は、京都府宇治市内で旅館を経営する株式会社である。平成24年8月13日から14日にかけて、宇治市を含む京都府南部を中心に猛烈な豪雨(24時間総雨量309.5mm、最大時間雨量78.5mm)が発生した。原告会社の旅館近傍を流れる普通河川には、暗渠入口部に約10cm四方の格子状スクリーンが設置されていたところ、本件豪雨により上流で山腹崩壊が発生し、流出した土砂・枝葉等がスクリーンに堆積して閉塞した。これにより暗渠入口部から土砂混じりの濁水が溢水し、旅館の1階及び地階が床上浸水する被害を受けた。原告会社及びその代表取締役・取締役である原告2名は、河川及び隣接する排水機場を管理する地方公共団体である被告に対し、国家賠償法2条1項に基づき、原告会社につき約1億2500万円、原告個人ら各200万円の損害賠償を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)スクリーンの格子状構造に営造物の設置又は管理の瑕疵があるか、(2)排水機場の電動ゲートを全閉として強制排水に切り替えていた運用方法に管理の瑕疵があるか、(3)スクリーンを改修していても浸水を回避できなかったか(不可抗力の抗弁)、(4)損害の有無及び額である。 【判旨】 裁判所は、スクリーンの瑕疵(争点1)を認めた。格子状構造は縦縞スクリーンと比較して小さい枝葉や泥等を容易に捕捉し、集中豪雨時に閉塞する構造上の危険性があったと認定した。宇治市では過去にも繰り返し豪雨被害が発生しており、被告においてスクリーン閉塞の危険は十分に予見可能であったとした。さらに、被告が豪雨後に実施した目幅20cmの縦縞スクリーンへの改修は豪雨前にも実現可能であったとして、格子状スクリーンは通常有すべき安全性を欠いていたと判断した。 不可抗力の抗弁(争点3)については、豪雨後に設置された目幅20cmの縦縞スクリーンが、平成25年及び平成30年の豪雨の際に枝葉等を捕捉しつつも隙間から濁水を流下させて閉塞に至らなかった実績を重視し、改修されていれば浸水を回避できた可能性が相応にあったとして排斥した。排水機場の瑕疵(争点2)については判断の必要がないとした。 損害については、修繕費等約1331万円を認めたが、本件浸水からの復旧に必要な範囲を超える全面改装費用等は因果関係を否定した。休業損害は、浸水日から営業再開前日までの約4か月半につき約1112万円を認めたが、営業再開後の逸失利益は、観光客数の減少等の他の要因も考えられるとして否定した。修繕費等は保険金により全額填補済みとし、原告個人らの慰謝料請求も棄却した。結論として、原告会社に対し約1131万円の支払を命じ、その余の請求を棄却した。