AI概要
【事案の概要】 トヨタグループ9社の共同出資により設立された研究所(被告)に研究系所員として勤務していた原告が、平成29年3月30日付けの普通解雇(本件解雇)は無効であるとして、労働契約上の地位確認、解雇後の賃金(月額75万1472円)の支払い、及び裁量労働制の不適用や強制労働状態に置かれたこと等を理由とする不法行為に基づく損害賠償302万5275円の支払いを求めた事案である。 原告は平成4年に被告に採用されたが、各職場で人間関係の問題から数年ごとに異動を繰り返し、平成26年2月にマルチフィジックス研究室に配属された。平成28年度の業務として「情報・数理科学に関する国内外研究の諸動向調査」を指示されたが、原告は上司の過去の指示にコンプライアンス違反があるなどと主張して業務に従事せず、被告代表者や上司らに対し不服・批判の申立てを執拗に繰り返した。被告は戒告処分、出勤停止処分と段階的な懲戒処分を行ったが、原告は態度を改めず、独自に「職場環境改善活動」と称する書き記し作業を行い、指示された業務を拒絶し続けた。なお、差戻し前の第1審は原告の請求を棄却したが、控訴審が弁論再開の求めに応じなかった手続的瑕疵を理由に差し戻し、本件は差戻し後の第1審である。 【争点】 1. 本件解雇の効力(解雇権濫用の有無) 2. 賃金請求権の有無及び金額 3. 不法行為の成否及び損害額(裁量労働制不適用、強制労働状態、団体交渉権侵害等) 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 争点1について、原告は少なくとも平成28年3月から解雇までの約1年間、指示された諸動向調査及び報告書調査への従事を拒絶し続け、業務遂行上の必要性もなく離席を繰り返していたと認定した。原告がハラスメント等を理由に不服申立てを行っていたとしても、指示された業務を遂行しないことが正当化されるものではなく、原告の申立てはいずれも理由がないと判断した。被告は面談・書面・メール等で繰り返し指導し、段階的に懲戒処分を行ったが原告は態度を改めず、人間関係を原因とする異動歴も考慮すると、配置転換による改善も期待できないとして、就業規則所定の解雇事由に該当する合理的理由があり、社会通念上も相当であると判断した。 争点3について、裁量労働制の適用除外は、原告が前提となる研究業務に着手しなかった以上不当とはいえず、書き記しについても被告が許可した事実は認められないとした。団体交渉についても、被告は2回の交渉に応じ解雇理由を説明しており、労働組合側の提案で打ち切られた経緯から、誠実交渉義務違反や団体交渉権侵害は認められないとした。