出席停止処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 岩沼市議会の議員であった被上告人が、市議会から科された23日間の出席停止の懲罰の取消しと、懲罰による議員報酬の減額分(27万8300円)の支払を求めた事案である。被上告人と同一会派のA議員が海外渡航を理由に常任委員会を欠席し、市議会から陳謝の懲罰を科された。被上告人は、議会運営委員会において、A議員が陳謝文を読み上げた行為について「読み上げられた中身に書いてあることは事実とは限りません」「仮に読み上げなければ次の懲罰があります。こういうのを政治的妥協といいます」と発言した。市議会はこの発言を問題として、被上告人に対し23日間の出席停止の懲罰を科し、その期間分の議員報酬を減額した。最高裁昭和35年大法廷判決は、地方議会議員に対する出席停止の懲罰は司法審査の対象とならないとしていたため、この判例変更の可否が争われた。 【争点】 普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否が司法審査の対象となるか。 【判旨】 最高裁大法廷は、裁判官全員一致の意見で、出席停止の懲罰の適否は司法審査の対象となると判示し、昭和35年大法廷判決を変更した。その理由として、出席停止の懲罰を科された議員は、その期間中、会議及び委員会への出席が停止され、議事に参与して議決に加わるなどの議員としての中核的な活動ができなくなり、住民の負託を受けた議員としての責務を十分に果たせなくなることを挙げた。このような出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的・自律的な解決に委ねられるべきであるということはできないとした。もっとも、出席停止の懲罰は議会の自律的な権能に基づくものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるとした。 【補足意見】 宇賀克也裁判官は補足意見において、出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが法律上の争訟に当たることは明らかであること、国会と異なり地方議会には憲法55条(資格争訟裁判権)や51条(免責特権)のような規定がなく、憲法は両者の自律性を同視していないこと、住民自治の観点からは、出席停止は議員の本質的責務の履行を不可能にし住民自治を阻害するものであり、住民自治を根拠に司法審査の対象外とすることは背理であること、司法審査の対象としても議会には裁量が認められ自律性が過度に阻害されることにはならないことを指摘した。