AI概要
【事案の概要】 被告(一般貨物自動車運送事業を営む株式会社)でトラック運転手として勤務していた原告ら(有期契約社員)は、労働契約法18条1項に基づき有期労働契約から無期労働契約に転換した。原告らは、無期転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している正社員に適用される就業規則(正社員就業規則)によるべきであると主張し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位の確認と、正社員との賃金差額(原告甲につき約9万円、原告乙につき約9万3000円)の支払を求めた。なお、原告甲は、先行する別訴(前訴)において、有期契約社員と正社員との労働条件の相違が労契法20条に違反するとして争い、最高裁平成30年6月1日判決(ハマキョウレックス事件)で一部勝訴していた。被告は前訴最判を受けて処遇改善費として一定額を原告らの賃金に組み入れたが、正社員化には応じなかった。 【争点】 主な争点は、(1)本件訴えが前訴の蒸し返しとして信義則に反するか、(2)無期転換後の労働条件について正社員就業規則による旨の合意があったか、(3)正社員就業規則が労契法18条1項第2文の「別段の定め」に当たるか、の3点であった。特に争点(3)では、無期契約社員規定を追加した契約社員就業規則の有効性(合意原則違反、均衡考慮原則・信義則違反、不利益変更該当性)が多角的に争われた。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。争点(1)について、本件は無期転換後の労働条件が争点であり前訴とは異なるから、蒸し返しには当たらないとして訴えは適法とした。争点(2)について、被告は団体交渉で一貫して無期契約社員を正社員にしない旨回答しており、原告らもそれを認識した上で契約社員就業規則による旨が明記された無期パート雇用契約書に署名押印していることから、正社員就業規則適用の黙示の合意は認められず、むしろ契約社員就業規則の適用について明示の合意があるとした。錯誤無効の主張や労組法16条違反の主張も退けた。争点(3)について、無期転換後も原告らと正社員との間には職務内容及び配置の変更の範囲に違いがあること、無期契約社員規定は労契法18条1項第2文と同旨の確認的規定にすぎず不利益変更には当たらないこと、労契法18条は無期転換後の契約内容を正社員と同一にすることを当然に想定したものではないこと等を理由に、正社員就業規則が「別段の定め」に当たるとの主張を排斥した。採用時に正社員化の約束があったとの主張についても、約10年間有期契約社員として更新が繰り返された経緯に照らし、正社員登用の可能性を説明したにすぎないとして退けた。