特許権に基づく損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「タンパク質を抽出する混合液」に関する特許(特許第5388259号)の特許権者である控訴人(原告)が、被控訴人(被告)株式会社ディーエイチシーによるクレンジングオイル(DHCウォーターフレンドリー クレンジング オイル)の製造・販売が本件特許権の侵害に当たるとして、損害賠償3000万円(当審で1000万円から拡張)及び遅延損害金の支払いを求めた控訴審事件である。 本件特許の請求項3(本件発明)は、第1の高級アルコールとは異なる炭素数20の第2の高級アルコールと炭化水素とを少なくとも含み、タンパク質等を含む抽出対象液からタンパク質を抽出する混合液に関するものである。被告製品にはオクチルドデカノール(第2の高級アルコール)及びスクワラン(炭化水素)が含まれ、構成要件A及びCの充足性は争いがあるものの、主たる争点は構成要件Bの「タンパク質を抽出する」混合液に該当するか否かであった。原審(東京地裁)は、被告製品は本件発明の技術的範囲に属さないとして請求を棄却していた。 【争点】 主たる争点は、被告製品が構成要件Bの「タンパク質を抽出する」混合液に該当するか否かである。控訴人は、被告製品を用いた二つの実験(甲8の実験及び甲34の追加実験)の結果に基づき、被告製品がタンパク質を抽出する機能を有すると主張した。これに対し被控訴人は、各実験には方法論上の問題があり、被告製品のタンパク質抽出機能は立証されていないと反論した。具体的には、(1)甲8の実験で使用されたCBB(クマシーブリリアントブルー)が界面活性剤の影響を受けやすく、被告製品に含まれる高濃度の界面活性剤(合計約●●質量%)の下では正確な測定ができないこと、(2)24〜48時間の長時間静置によりCBBとタンパク質の複合体が凝集・沈殿した可能性があること、(3)甲34の追加実験では遠心分離という物理的作用により沈殿が生じた可能性があること等が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴を棄却し、原判決の結論を維持した。まず、構成要件Bの「タンパク質を抽出する」にいう「抽出」とは、抽出対象液を少なくとも2層に分離させ、タンパク質含有層が形成されることを意味すると解釈した。 甲8の実験については、(1)実験結果の写真(別紙1の2及び3)は全体的にCBBが青色を呈しており、特定箇所に有意な濃度差を認めることができず、界面検出センサー等による各層の特定もされていないため、2層に分離しタンパク質含有層が形成されたとは認められない、(2)CBBは界面活性剤の影響を受けやすく、被告製品に含まれる高濃度の界面活性剤や豆乳中の核酸による発色の影響を否定できない、(3)CBBとタンパク質の複合体は1時間以上で凝集・沈殿することが広く知られており、24〜48時間静置後の結果は沈殿の影響を否定できないとして、被告製品による抽出を認めなかった。 甲34の追加実験についても、(1)抽材に水性溶媒が含まれておらず構成要件Bの「抽出対象液」の構成と異なる、(2)遠心分離という物理的作用により沈殿が生じた可能性が高く、被告製品による2層分離とは認められない、(3)試料の採取場所・採取量が不明で比較検討ができないとして、構成要件Bの充足を認めなかった。以上により、被告製品は本件発明の技術的範囲に属さないと判断した。