AI概要
【事案の概要】 平成21年9月29日午後9時40分頃、鳥取県米子市所在のラブホテルにおいて、金品を物色中の被告人が、同ホテル支配人(当時54歳)に発見されたため、支配人の頭部を壁面に叩き付け、頸部をひも様のもの又は手で絞め付けるなどの暴行を加えて反抗を抑圧し、現金約26万8000円を強取した強盗殺人の事案である。被害者は遷延性意識障害を伴う脳挫傷等の傷害により寝たきりとなり、約6年後に敗血症に起因する多臓器不全で死亡した。被告人は事件の約半年前までホテルの店長として勤務しており、客室から事務所への侵入経路や現金保管状況を熟知していた。本件は、差戻前第1審、第1次控訴審(無罪)、上告審(破棄差戻)、第2次控訴審(破棄差戻)を経た差戻後の裁判員裁判であり、複雑な審理経過を辿った。 【争点】 主たる争点は被告人の犯人性である。直接証拠がなく、間接事実の総合評価により犯人性が争われた。特に、従業員らの夕食終了時刻の認定が、被告人がホテルに侵入した時点で被害者が事務所にいたか否か(居直り強盗の成否)を左右する重要な争点となった。弁護人は、夕食終了時刻は午後9時26分頃であり、被告人が侵入した午後9時34分頃には被害者が既に事務所にいたため居直り強盗ではないと主張し、さらに被告人の犯人性自体を否定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、第2次控訴審の破棄判決の拘束力を検討した上で、従業員D証言の信用性を認め、夕食終了時刻を午後9時40分頃と認定した。D証言は、客室清掃の電磁的記録から逆算して推定される時刻及び救急隊員への従業員Eの説明と整合し、一貫性・具体性があり、矛盾する客観的事情も存在しないと判断した。犯人性については、(1)午後9時34分頃の客室ドア開閉記録から犯人がホテル内部事情を知る人物と推認されること、(2)被告人が犯人像に合致すること、(3)犯行の約12時間後に被害金の一部と矛盾しない230枚の千円札をATMに入金していること、(4)事件後に逃走・警察回避行動をとっていること、(5)被告人以外の犯行可能性が認められないことを総合し、被告人が犯人であると認定した。居直り強盗として強盗殺人罪の成立を認め、暴行態様が一方的で無慈悲であること、強固な殺意が認められること、被害者が約6年間寝たきりの末に死亡したこと、被告人が10年以上犯行に向き合っていないことなどから刑事責任は極めて重大であるとしつつ、突発的な一度の犯行であること等も考慮し、求刑どおり無期懲役を言い渡した。