意匠権侵害差止損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社アールシーコア)は、「BESS」ブランドで木造戸建て住宅を販売する会社であり、「組立家屋」に係る意匠権(登録第1571668号、部分意匠)を有していた。原告が販売する「ワンダーデバイス」シリーズの「フランクフェイス」は、建物正面に柱部と梁部で略十字の模様を形成する特徴的なデザインを備えていた。 被告(マキタホーム株式会社)は、鳥取市内で建売住宅3棟を製造・販売したが、その正面視のデザインが原告製品と酷似していた。原告は、被告の行為が意匠権侵害に当たるとして差止め及び損害賠償を求めるとともに、原告製品の形態が周知な商品等表示に該当するとして、不正競争防止法2条1項1号に基づく差止め及び損害賠償を求めた。損害賠償請求額は約1023万円であった。 【争点】 主な争点は、(1)本件意匠と被告製品の意匠の類否(被告各建物が「物品」たる組立家屋に該当するか、形状が類似するか)、(2)本件意匠権の無効の抗弁(新規性欠如・創作容易性)の成否、(3)原告製品形態の不競法上の「商品等表示」該当性、(4)損害額の算定方法であった。特に、ツーバイフォー工法で建築され土地と一体で販売された建売住宅が意匠法上の「物品」に当たるかが重要な論点となった。 【判旨】 裁判所は、意匠権侵害を認め、差止め及び約85万円の損害賠償を命じた。 まず物品該当性について、不動産であっても、枠組壁工法により規格化・量産された部材を現場で組み立てるなど動産的に取り扱うことが可能な建物は「組立て家屋」として意匠法上の「物品」に該当すると判断した。被告各建物は3か月程度の短い工期で共通した形状で建築されており、組立家屋に当たると認定した。 形状の類否については、被告意匠は本件意匠と基本的構成態様及び具体的構成態様の大部分で共通しており、柱部の左右位置の差異は美感に決定的影響を与えないとして、類似性を肯定した。 無効の抗弁については、公知の引用意匠との間に、梁部が柱部を挟む配置や柱部・梁部が3つの矩形から構成される点等の差異が存在し、これらが「メリハリの効いたシャープな印象」対「のっぺりとした重みのある印象」という質的に異なる美感を生じさせるとして、新規性欠如も創作容易性も否定した。 他方、不競法に基づく請求については、原告製品形態と同一又は類似の形態を有する他社建物が複数存在したことから、特別顕著性が認められないとして棄却した。 損害額の算定では、土地と建物を一体で販売した場合でも、意匠権侵害の「利益」は建物部分のみで算定すべきとし、さらに被告が建物に不当に低い内訳価格を付していたとして、固定資産評価額から算出した土地の客観的価格を用いて建物の販売利益を認定した。その上で、本件意匠は建物正面視の一部に係る部分意匠にすぎないこと等を考慮し、寄与度を10%と認定して推定を覆滅し、損害額を約85万円(弁護士費用含む)と算定した。