AI概要
【事案の概要】 札幌市の第1種低層住居専用地域(北側斜線高度地区)において、南側隣地に新築された2階建て建物(被告建物)により日照が大幅に減少したとして、北側隣地の建物(原告建物)に居住する原告が、被告に対し、日照権又は人格権に基づく被告建物2階東側部分の切除・撤去と、不法行為に基づく慰謝料300万円の支払を求めた事案である。 原告建物の1階西側には100歳近い母親の介護室があり、被告建物の建築前は冬至でも約6時間の日照があったが、建築後は34分間にまで減少した。1階居間の日照も約6時間から2時間未満に制約された。原告は、被告建物の基礎工事の段階から懸念を伝え、民事調停を申し立てたが不成立に終わり、被告は設計変更の要請を拒否して建築を完了させた。被告建物は東西約16メートルと幅広で、旧建物よりも北側に寄せて高く建築されていた。 【争点】 (1) 被告建物による原告の日照権・人格権侵害の有無(受忍限度を超えるか) (2) 建物一部撤去の差止めの必要性 (3) 損害額 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 日照権侵害について、裁判所は、居宅の日照は快適で健康な生活に必要な法律上保護される利益であるとしつつも、社会生活上受忍すべき程度を超えて侵害された場合に初めて違法となるとの判断枠組みを示した。その上で、(1)被告建物は建築基準法上の日影規制の対象外(軒高7メートル以下)であり、北側斜線制限等の法令上の規制を全て遵守していること、(2)札幌市では12月の日照時間が1日平均約2.5時間、冬至日で約0.7時間にすぎず、散乱日射量の割合が冬至日で90%に達するため、直達日射の減少による総日射量への影響は限定的であること、(3)周辺地域では2階建て住宅を敷地北側に寄せて建築する配置が一般的であり、被告建物の規模・形状は地域の建物として特殊とはいえないこと、(4)原告建物の南端から被告土地境界線までの距離が5.7メートルと近隣建物より短く、南側建物の影響を受けやすい配置であったこと、(5)被告は法令の制限内で通常の行動をしたにすぎず、権利濫用や侵害意図は認められないこと等の事情を総合考慮し、受忍限度を超える日照権侵害はないと判断した。 眺望阻害・圧迫感による人格権侵害及び雨水・落雪による庭木被害のおそれについても、同様に受忍限度内であるとして、いずれも排斥した。