工事実施計画認可取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、JR東海(参加人)が国土交通大臣から全国新幹線鉄道整備法(全幹法)9条1項に基づく中央新幹線(品川・名古屋間)の工事実施計画の認可(甲事件:平成26年10月認可の土木構造物関係分、乙事件:平成30年3月認可の電力設備等残余工事分)を受けたことについて、東京都・神奈川県・山梨県・静岡県・長野県・岐阜県・愛知県の7都県に居住する原告ら(甲事件738名、乙事件についても多数)が、各認可は違法であると主張してその取消しを求めた抗告訴訟である。中央新幹線は超電導磁気浮上方式(リニア方式)を採用し、品川・名古屋間286.6kmのうち約86%がトンネル区間となる大規模事業である。原告らは、乗客の安全な輸送を受ける利益、南アルプス等の自然環境を享受する利益、工事予定地内の財産権、工事車両の騒音・振動等による生活環境上の利益など多岐にわたる利益を主張して原告適格を争った。被告(国)は、原告らにはいずれの利益についても原告適格がないとして訴えの却下を求めた。 【争点】 主たる争点は、原告らが全幹法9条1項に基づく工事実施計画認可の取消訴訟において原告適格(行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」)を有するか否かである。具体的には、(1)根拠法令は全幹法か鉄道事業法か、(2)乗客として安全な輸送役務の提供を受ける利益、(3)南アルプス等の良好な自然環境を享受する利益・自然環境保全を求める権利、(4)工事予定地内の土地・建物等の所有権・借地権等、(5)発生土運搬車両の騒音・振動・大気汚染、景観阻害による生活環境上の利益、の各観点から原告適格の有無が争われた。 【判旨】 裁判所は、原告らの訴えをいずれも却下した。まず根拠法令について、中央新幹線は全幹法2条の「新幹線鉄道」の定義に適合し、同法に基づく手続が進められたことに違法はないとして、全幹法9条1項を根拠法令と判断した。乗客の安全利益については、全幹法9条1項が技術基準省令等への適合性審査を通じて輸送の安全確保を趣旨・目的とすることは認めつつも、新幹線の乗客となる可能性は個別の輸送契約締結まで潜在的・抽象的にとどまるとして、個別的利益としての保護は否定した。自然環境享受の利益については、環境影響評価法等の関係法令の趣旨・目的を全幹法に付加して解釈したが、良好な自然環境の享受は国民が一般的に等しく受けるものであり、侵害態様も生命・身体への直接的危害とは区別される広義の生活環境悪化にとどまるとして、個別的利益としての保護を否定した。工事予定地内の財産権については、9条認可の直接の法的効果は建設工事の制限解除にとどまり、土地収用等は別個の手続に基づくものであるとして否定した。発生土運搬車両の騒音・振動・大気汚染については、一般論として運行経路周辺住民の原告適格を認める余地を示したが、本件では評価書において運行経路等が具体的に特定されておらず、原告らが著しい被害を受けるおそれのある地域に居住していると認定する手がかりを欠くとして、結論として原告適格を否定した。交通混雑や景観阻害については公益に属する利益として個別的保護を否定した。