AI概要
【事案の概要】 本件は、東レ株式会社が有する「止痒剤」に関する特許(特許第3531170号)の存続期間延長登録を巡る審決取消訴訟である。沢井製薬が延長登録の無効審判を請求し、ニプロが特許法148条1項に基づき請求人側として審判に参加した。特許庁は令和2年7月28日、延長登録を無効とする審決をしたため、東レが審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。本中間判決では、被告ニプロが主張する被告適格の欠如(本案前の抗弁)の当否が争点となった。 【争点】 特許法148条1項に基づく参加人(1項参加人)が、審決取消訴訟において同法179条ただし書にいう「請求人」として被告適格を有するか否かが争われた。被告ニプロは、1項参加人は審判の参加人にすぎず、被参加人が審判請求を取り下げて参加人が手続を続行した場合に限り「請求人」となるのであって、それ以外の場合には被告適格を有しないと主張した。その根拠として、①1項参加人と3項参加人の地位に実質的な差異がないこと、②1項参加人も原則として任意に参加を取り下げられること、③参加申請書に「請求」の定立が求められていないこと、④被告適格を認めると多数の参加人を全て被告としなければならず訴訟経済に反すること等を挙げた。 【判旨】 知財高裁は、被告ニプロの本案前の抗弁を排斥し、1項参加人の被告適格を肯定した。その理由として、まず特許法148条1項が「請求人としてその審判に参加することができる」と明記していることから、1項参加人は同法179条1項の「請求人」に該当すると判示した。また、1項参加は無効審判を請求できる者に限って認められ、一切の審判手続をすることができるとされている上、被参加人が請求を取り下げても審判手続を続行できる(同条2項)ことは、1項参加人がまさに「請求人」としての地位を有することを示していると述べた。さらに、ニプロの個別の主張に対しても、1項参加人と3項参加人は参加要件・地位が異なること、参加の取下げが認められるのは被請求人の利益保護が図られているためであって「請求」を定立していないことに基づくものではないこと、参加人が多数でも訴訟の煩雑化や遅延は認められないこと、被参加人の取下げ後に受継を認める法的根拠が不明であり手続保障に欠ける可能性があること等を指摘し、いずれも退けた。本判決は、特許法148条1項参加人の審決取消訴訟における被告適格を正面から肯定した実務上重要な判断である。