特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(三菱重工機械システム株式会社)は、機械式駐車装置に関する特許(特許第6093811号)の特許権者である。本件特許は、乗降室内の安全確認の終了が入力される入力手段、人の入退室を検知する入退室検知手段、安全確認終了の入力後に車両搬送を実行する制御手段等を備えた機械式駐車装置に関するものである。本件特許に対して3件の特許異議申立てがなされ、特許庁は全請求項(1〜21)に係る特許を取り消す決定をした。その理由は、(1)原告がした訂正請求が新規事項の追加に当たり認められない、(2)登録時の請求項に係る発明は先行刊行物に基づき新規性又は進歩性を欠く、というものであった。原告はこの取消決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 主な争点は、本件訂正が新規事項の追加に当たるか否かである。訂正後の請求項1では、安全確認終了入力手段を「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」及び「反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」に複数配置することが特定されていた。特許庁は、カメラとモニタを介さずに直接目視で安全確認する場合、安全確認実施位置は乗降室内に限られるところ、訂正後の請求項は乗降室外での目視確認を含み得る点で新規事項の追加に当たると判断した。これに対し原告は、安全確認実施位置は乗降室の内外を問わないと主張した。 【判旨】 裁判所は、本件決定を取り消した。まず、訂正後請求項1の構成Bは安全確認実施位置や安全確認終了入力手段の位置を乗降室の内外いずれとも特定しておらず、乗降室外での目視確認構成を含み得ることは文言上明らかであるとした。次に、本件明細書等の実施例において乗降室外目視構成を前提とした記載がないとしても、これらはあくまで実施例の記載にすぎず、発明の構成を実施例記載の構成に限定するものとはいえないと判示した。さらに、発明の目的・意義の観点から、安全確認実施位置は乗降室内の安全等を確認できる位置にあれば足り、その位置を乗降室の内外に限定すべき理由はないとした。被告の「乗降室外からの目視確認は困難」との主張に対しても、壁のない駐車装置や透明パネルの駐車装置であれば乗降室外からも安全確認が可能であり、壁がある場合でも出入口付近の適切な位置からは目視確認が可能であるとして排斥した。以上から、本件訂正を認めなかった本件決定の判断は誤りであり、新規性・進歩性の判断も訂正後の発明の要旨に基づいて行うべきであるとして、その余の取消事由を判断するまでもなく本件決定を取り消した。