発電所運転停止命令義務付け請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 福井県等11府県に居住する原告らが、原子力規制委員会が平成29年5月24日付けで関西電力(被告参加人)に対してした大飯発電所3号機及び4号機に係る発電用原子炉の設置変更許可(本件処分)の取消しを求めた行政訴訟である。原告らは、本件処分が設置許可基準規則で定める基準に適合しないにもかかわらずされたものであり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律43条の3の6第1項3号・4号に反し違法であると主張した。争点は、原告適格(争点1)のほか、基準地震動の策定に用いた入倉・三宅式及び壇ほか式の合理性(争点2)、入倉・三宅式に基づく地震モーメントをそのまま震源モデルの値とすることの合理性(争点3)、制御棒挿入性(争点4)、耐震安全性に関する敷地内破砕帯の評価(争点5)、基準津波の策定(争点6)、重大事故対策の技術的能力(争点7)、放射性物質の拡散抑制設備(争点8)と多岐にわたった。 【争点】 最大の争点は、争点3の基準地震動の策定における地震モーメントの設定方法であった。地震動審査ガイドの「ばらつき条項」は、経験式から算出される地震規模は「平均値としての地震規模」を与えるものであることから、経験式が有する「ばらつきも考慮されている必要がある」と定めていた。原告らは、関西電力が入倉・三宅式により算出した地震モーメントの平均値をそのまま震源モデルに用いており、経験式のばらつきを考慮した上乗せの検討が一切行われていないと主張した。これに対し被告は、震源断層面積の設定時に不確かさを保守的に考慮しているため、地震モーメントに重畳して上乗せする必要はないと反論した。 【判旨】 裁判所は、伊方最高裁判決(最判平成4年10月29日)の判断枠組みを踏襲し、原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理すべきであるとした上で、立証責任については、被告側がまず規制委員会の判断に不合理な点のないことを相当の根拠・資料に基づき主張立証する必要があるとした。 争点2(入倉・三宅式及び壇ほか式の合理性)については、いずれの経験式も現在の科学技術水準に照らして不合理とはいえないと判断した。しかし争点3について、裁判所は、ばらつき条項の第2文は経験式によって算出される平均値に上乗せの必要があるか否か自体を検討することを求める趣旨であると解した上で、原子力規制委員会の調査審議において経験式のばらつきについて検討した形跡がなく、断層面積設定時の不確かさの考慮と地震モーメントの経験式のばらつきの考慮は相当異質なものであって相互に補完し得るとは直ちにいえないと指摘し、地震モーメントは基準地震動策定における重要な要素であるから、この過誤・欠落は看過し難いものであると判断した。 以上の判断により、裁判所は、原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があると認め、本件処分は違法であるとして設置変更許可を取り消した。原発の設置変更許可を取り消した判決は、司法判断として極めて重要な先例となるものである。