遺族年金支給停止処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 厚生年金保険の被保険者であった夫(亡A)の死後、遺族厚生年金を受給していた妻(原告)が、厚生労働大臣から遺族厚生年金の支給停止処分を受けたため、その取消しを求めた行政訴訟である。亡Aは平成27年11月に死亡し、原告は遺族厚生年金の裁定を受けた。その後、亡Aの死亡当時に胎児であった婚外子Cが平成28年4月に出生し、認知請求の裁判が確定した。これを受けて厚生労働大臣は、Cに遺族厚生年金及び遺族基礎年金を裁定する一方、厚生年金保険法66条2項に基づき、原告に対する遺族厚生年金の支給を停止する処分(本件処分)をした。原告は、Cは遺族基礎年金の受給権を有しない、又は原告自身が遺族基礎年金の受給権を有するとして、本件処分の取消しを求めた。 【争点】 厚年法66条2項が定める配偶者に対する遺族厚生年金の支給停止要件、すなわち「配偶者が遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するとき」に該当するか否か。具体的には、(1)国民年金法37条の2第2項の胎児みなし規定にいう「子」は、配偶者との法律上の親子関係を有する子に限られるか(Cの遺族基礎年金受給権の有無)、(2)胎児みなし規定後段により、原告がCと生計を同じくしていたとみなされるか(原告の遺族基礎年金受給権の有無)が争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まずCの遺族基礎年金受給権について、胎児みなし規定の趣旨は、被保険者等の死亡後に出生した子についても被保険者等の扶養を受けて生計を維持され得る地位にあったことから生活保障の必要性を認めた点にあり、この必要性は嫡出子か否かによって変わるものではないとした。また、文言上も被保険者等の子であること以外に何らの限定を付していないことから、胎児みなし規定の適用に当たっては被保険者等の子であれば足りると判断し、Cは遺族基礎年金の受給権を有すると認めた。次に原告の遺族基礎年金受給権について、遺族基礎年金の配偶者に対する支給は18歳未満の子を養育する配偶者の生活保障のためにあるところ、配偶者が子と生計を同じくしなくなったときは受給権が消滅する旨の規定の趣旨を踏まえ、配偶者が被保険者等の子の出生時に当該子と生計を同じくしていなかった場合には受給権が生じないと解するのが相当であるとし、原告はCの出生時にCと生計を同じくしていなかったから遺族基礎年金の受給権を有しないと判断した。以上から、本件処分は適法であるとして原告の請求を棄却した。