AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成29年10月、いわゆる東名高速あおり運転死亡事故で逮捕された被疑者に関連して、インターネット掲示板「5ちゃんねる」の当該事件に関するスレッドに投稿を行った。具体的には、「Aの親ってD区で建設会社社長してるってマジ?」という他者の投稿(793番)を引用した上で、「これ?違うかな。」という文章に続けて、被害会社であるC株式会社のホームページURLを投稿した。これにより、被害会社があたかも被疑者の父親が経営する会社であり、被疑者の勤務先であるかのような事実が不特定多数の者に閲覧可能な状態に置かれた。被害会社は被疑者とは全く無関係であったにもかかわらず、苦情の電話や無言電話が殺到して一時休業を余儀なくされるなどの実害が生じた。 【争点】 ①被告人の投稿が名誉毀損罪の構成要件に該当するか(公然と事実を摘示したといえるか、被害会社の名誉を毀損するものか)、②名誉毀損罪の故意があったか、が争点となった。弁護人は、本件投稿と793番の投稿を併せて読むべきではないこと、匿名掲示板上の疑問形の投稿は事実の摘示に当たらないこと、犯罪の被疑者がたまたま勤めていたという事実は会社の社会的評価を害しないこと、被告人に名誉毀損の故意がなかったことなどを主張して無罪を求めた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、本件投稿の体裁から閲覧者は793番の投稿への返信と捉えるのが通常であり、両投稿を併せて読めば被害会社が被疑者の父親の経営する会社等である可能性があると容易に理解できるとして、公然と事実を摘示したものと認定した。匿名掲示板上の投稿であっても全てが虚偽との認識が共有されているわけではなく、本件投稿は793番の投稿内容を前提にした被害会社の情報を何らの留保なく記載しており、信頼性の低い情報として受け取られるとの疑いはないとした。また、本件投稿により被害会社が犯罪者を輩出する会社であるとのイメージを抱かせ、信用や評判に疑問や誤解を生じさせるものとして名誉毀損を認めた。故意については、被告人は閲覧者が被害会社を被疑者の関係先と理解する可能性を認識し得たとして、少なくとも未必的な故意を認定した。もっとも、積極的に名誉を毀損する意図までは認められないこと、793番の投稿者や第三者の行為が介在していること、前科前歴がないことを考慮し、求刑どおり罰金30万円を言い渡した。