AI概要
【事案の概要】 音楽著作権の管理事業者である一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が、カラオケ愛好家向け歌謡情報誌「月刊 歌の手帖」を発行・販売していた株式会社マガジンランドに対し、同社が20年以上にわたり、管理著作物の利用許諾申請において雑誌の発行部数を毎号1万部と過少申告しながら、実際には毎号約3万部を発行・販売し、著作権(複製権)を侵害したとして、使用料相当損害金等合計約1億4443万円の損害賠償を求めた本訴事件と、被告が、原告が事業譲渡先の歌の手帖社名義の利用許諾申請を正当な理由なく拒絶し、業務委託契約の破綻を招いたとして、委託料6年分の1億円の損害賠償を求めた反訴事件である。 【争点】 1. 被告による雑誌の超過部数発行(著作権侵害)の有無 2. 原告が超過部数発行を黙示的に承諾していたか(被告は、原告が「発行部数10万部」と記載された媒体資料を認識していたと主張) 3. 原告の損害額 4. 消滅時効の成否(被告は原告が平成10年以降侵害を知っていたと主張) 5. 原告が歌の手帖社名義の利用許諾申請を拒絶したことが被告に対する不法行為を構成するか 【判旨】 裁判所は、原告の本訴請求を全部認容し、被告の反訴請求を棄却した。 争点1について、証拠及び弁論の全趣旨から、被告が「1998年12月号」から「2018年1月号」まで毎号1万部と虚偽申告しながら超過部数を発行していた事実を認定した。 争点2について、原告は文化庁長官の登録を受けた著作権等管理事業者であり、使用料規程に反して超過部数発行を承諾したことをうかがわせる客観的証拠はなく、20年以上にわたり多額の使用料請求を放棄する動機も考え難いとした。雑誌誌面の「発行部数10万部」の記載も、出版社の公称部数は現実の部数と一致するとは認められず、原告が超過発行を認識・容認していたとはいえないと判断した。 争点4について、原告が平成29年11月の監査以前に著作権侵害の事実を知っていた証拠はなく、監査から3年以内に提訴しているため、消滅時効は完成していないとした。 争点5(反訴)について、著作権等管理事業法16条の「正当な理由」の判断枠組みを示した上で、管理著作物の無許諾利用に係る使用料相当損害金の未清算がある場合に利用許諾を拒絶することは同条の趣旨に反しないとし、原告が当初歌の手帖社名義の申請を許諾せず被告名義の申請のみ許諾した対応には正当な理由があったと認定した。原告の対応は被告に対する不法行為を構成せず、業務委託契約の終了は被告自身の著作権侵害に起因するものであるとして、反訴請求を棄却した。損害額は使用料相当損害金約9071万円、遅延損害金約4464万円、弁護士費用約907万円の合計約1億4443万円と認定された。