審決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 岡山県に本店を置き、総合スーパーマーケット等を展開する原告(年間売上高1200億円台)が、公正取引委員会(被告)に対し、優越的地位の濫用を理由とする排除措置命令及び課徴金納付命令(課徴金額2億2216万円)に係る審決の取消しを求めた事案である。原告は、取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者165社に対し、平成19年1月以降、(1)新規開店等に際して納入業者の従業員を無償で派遣させる、(2)アドバルーン費用やイベント費用を納入業者に金銭負担させる、(3)販売期限経過商品を納入業者に返品する、(4)割引販売の損失を納入業者の代金から減額して補填する、(5)クリスマス関連商品を購入させるなどの行為を行っていたとされた。被告は、これらが独占禁止法19条(優越的地位の濫用)に違反するとして排除措置命令及び課徴金納付命令を発したが、原告は審判請求を行い、被告は審決で一部変更(対象を127社に縮小)したものの、原告の請求の大部分を棄却した。 【争点】 (1)原告の取引上の地位が納入業者127社に対して優越しているか、(2)原告が127社に対して濫用行為を行ったか、(3)課徴金の算定方法の違法性の有無、(4)排除措置命令書及び課徴金納付命令書における主文の不特定及び理由の記載不備による違法性の有無。 【判旨】 東京高裁は、争点(4)について判断し、原告の請求を認容した。まず、排除措置命令書について、主文で「特定納入業者」と記載しながら、その具体的な商号が命令書に記載されておらず、原告において何を決議すべきかが判然とせず、履行が不能又は著しく困難であると認定した。理由の記載についても、行為の相手方が具体的に特定されていないため、独占禁止法49条1項に違反するとした。被告は、命令書送達時に「課徴金算定対象事業者一覧表」を参考資料として同封したことにより瑕疵は治癒されたと主張したが、裁判所は、同一覧表は命令の一部ではなく参考資料にすぎず、委員長及び委員の合議の結果を踏まえて作成されたかも明らかでないとして、命令書の記載を補充するものとは認められないと判断した。また、事前手続の実施や審決による事後的な補正によっても瑕疵は治癒されないとし、最高裁判例を引用して、理由付記制度の趣旨である行政庁の判断の慎重・合理性の担保及び恣意の抑制という機能を重視した。課徴金納付命令書についても同様に、違反行為の相手方や個々の購入額が具体的に示されておらず、独占禁止法50条1項に違反すると判断した。以上から、その余の争点を判断するまでもなく、本件各命令はいずれも全部取り消されるべきであるとして、審決の主文1項及び3項を取り消した。