AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(アムジェン・インコーポレイテッド)が特許権者である「炎症性疾患および自己免疫疾患の処置の組成物および方法」に関する特許(特許第5766124号)について、原告(エフ・ホフマン-ラ ロシュ アクチェンゲゼルシャフト)が無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、IL-2(インターロイキン-2)の改変体を含む組成物であり、FOXP3陽性調節性T細胞(Treg)においてSTAT5リン酸化を刺激する一方、FOXP3陰性T細胞においてはその能力が低下しているという特性を有し、自己免疫疾患等の処置に用いるものである。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明の「IL-2RβおよびIL-2Rγ親和性」の意義に関連する実施可能要件違反の有無(取消事由1)、(2)IL-2Rβ親和性のみが低下した改変体についての実施可能要件違反の有無(取消事由2)、(3)サポート要件違反の有無(取消事由3)、(4)先願(甲1)に基づく新規性欠如の有無(取消事由4)、(5)先願に基づく進歩性欠如の有無(取消事由5)、(6)優先権主張を前提とした特許法29条の2違反の有無(取消事由6)である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1について、γ親和性は測定不可能であるという技術常識を踏まえれば、「IL-2RβおよびIL-2Rγ親和性」はIL-2Rβγ複合体への親和性を意味すると理解され、βγ親和性は測定可能であるから、実施可能要件に違反しないとした。取消事由2について、本件明細書の実施例から、α変異のみのIL-2改変体(haWT)はFOXP3陰性T細胞の発生抑制に有意差がない一方、β変異又はβγ変異を含むIL-2改変体(haD等)は顕著に抑制することが示されており、当業者はβ変異又はβγ変異が重要であることを理解でき、(d)(ⅰ)改変体及び(d)(ⅲ)改変体も所望の効果を奏することを推認できるとした。新規性・進歩性について、甲1の「CD8陽性細胞傷害性T細胞」は本件発明の「FOXP3陰性T細胞」と実質的に同一とはいえず、CD4陽性FOXP3陰性T細胞における効果は甲1に記載されていないことから、相違点は実質的であり、新規性及び進歩性は否定されないと判断した。