貸金返還請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2受887
- 事件名
- 貸金返還請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2020年12月15日
- 裁判種別・結果
- 判決・その他
- 裁判官
- 林道晴、戸倉三郎、林景一
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 亡Aは、長男である被上告人に対し、平成16年から平成18年にかけて3回にわたり合計953万5000円を貸し付けた(①253万5000円、②400万円、③300万円)。被上告人は平成20年9月3日、弁済を充当すべき債務を指定することなく、78万7029円を弁済した。Aが平成25年に死亡し、三女である上告人が各貸金債権を相続した。上告人は平成30年8月に本件訴訟を提起したが、被上告人は貸付け②③について消滅時効(民法167条1項の10年)を主張した。これに対し上告人は、上記弁済が債務の承認(民法147条3号)に当たり時効が中断していると反論した。原審は、弁済は法定充当により貸付け①の債務にのみ充当されたとして、貸付け②③に係る債務の承認としての効力を認めず、貸付け②③の請求を棄却した。 【争点】 同一当事者間に複数の金銭消費貸借契約に基づく元本債務が存在する場合に、借主が弁済充当の指定をせずに全債務を完済するに足りない額の弁済をしたとき、当該弁済が弁済充当された債務のみの承認となるのか、それとも全債務の承認として消滅時効を中断する効力を有するのかが争われた。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、上告人の請求を874万7971円及び遅延損害金の限度で認容した。その理由として、同一当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において、借主が弁済充当の指定をせずに全債務を完済するに足りない額の弁済をしたときは、特段の事情のない限り、当該弁済は各元本債務全ての承認として消滅時効を中断する効力を有すると判示した。その根拠として、借主は自らが契約当事者となっている数個の貸金債務の存在を認識しているのが通常であり、弁済の際に充当すべき債務を指定できるにもかかわらず指定せずに弁済することは、各元本債務全てについてその存在を知っている旨を表示するものと解されるからであるとした。本件では、被上告人が充当指定なく弁済しており、貸付け②③の承認としての効力を否定すべき特段の事情もうかがわれないとして、上告人の訴訟提起時点では貸付け②③の消滅時効は未完成であったと結論づけた。