AI概要
【事案の概要】 本件は、「下肢用衣料」に関する特許(特許第4213194号)について、原告(株式会社タカギ)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、スパッツ等の下肢用衣料において、前身頃の足刳り形成部の湾曲した頂点を腸骨棘点付近に位置させ、大腿部パーツが前方に突出する立体形状とすることで、股関節の屈伸運動時の生地抵抗を低減する構成に特徴がある。原告は、本件出願前に公然実施された先行製品A〜Cに基づく新規性・進歩性の欠如、明確性要件違反、サポート要件違反、実施可能要件違反を主張した。なお、関連する侵害訴訟(大阪地裁平成26年(ワ)第7604号)では、原告の製品が本件特許権を侵害すると認定され、損害賠償の一部が認容されていた。 【争点】 (1) 先行製品A〜Cの公然実施該当性、(2) 先行製品A〜Cと本件発明の同一性(構成要件D「腸骨棘点付近」の充足の有無)、(3) 先行製品A〜Cに基づく進歩性の有無、(4) 構成要件D「腸骨棘点付近」の明確性要件適合性、(5) サポート要件・実施可能要件の適合性。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、先行製品A〜Cについて、品質検査・縫製検査合格後に販売準備が進められていた経緯等から、いずれも本件出願前に公然実施されていたと認定し、この点に関する審決の判断は誤りであるとした。しかし、先行製品が構成要件D(足刳り形成部の湾曲した頂点が腸骨棘点付近に位置する構成)を備えていたかについては、原告提出の検証結果(サンプルをトルソーに着せレントゲン写真と対比したもの)につき、サンプルの生地が先行製品の生地と同一であることを認めるに足りる証拠がなく、生地が異なれば着用時の伸び具合や足刳り形成部の変形度合いが異なることは自明であるとして、先行製品の再現とは認められないと判断した。進歩性についても、先行製品自体に足刳り形成部の頂点を腸骨棘点付近に位置させる動機づけの示唆はなく、かかる構成が出願当時周知であった証拠もないとして、容易想到性を否定した。明確性要件については、確定した別件審決と同一の事実に基づくもので特許法167条により主張が許されないとした上、「腸骨棘点付近」は上前腸骨棘を中心としつつ下前腸骨棘付近をも含むものと解され内容は明確であるとした。サポート要件・実施可能要件違反の主張についても、いずれも発明特定事項に基づかない主張であるなどとして排斥し、審決の判断に誤りはないと結論づけた。