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下級裁

被爆者健康手帳申請却下処分取消等請求事件

判決データ

事件番号
平成28行ウ9
事件名
被爆者健康手帳申請却下処分取消等請求事件
裁判所
長崎地方裁判所
裁判年月日
2019年1月8日
裁判官
武田瑞佳堀田秀一小島務

AI概要

【事案の概要】 本件は、韓国在住の原告ら2名が、昭和20年8月9日に長崎に原子爆弾が投下された際、当時の長崎市内にあった三菱重工業長崎造船所に徴用されて同市内にいたとして、被爆者援護法1条1号の「被爆者」に該当すると主張し、長崎市長に被爆者健康手帳の交付を申請したところ、長崎市長が「被爆事実を確認できない」として申請を却下したことから、却下処分の取消しと手帳交付の義務付けを求めるとともに、被告国および被告長崎市に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等の連帯支払を求めた事案である。 被爆者援護法は、国の責任において、原爆投下の結果生じた放射能に起因する健康被害という他の戦争被害とは異なる特殊な被害の重大性に鑑み、高齢化が進む被爆者に対して総合的な援護を行うことを目的としており、同法1条1号は、原爆投下時に広島市または長崎市の区域内に在った者を被爆者の一類型としている。 原告らは、いずれも日本統治下の朝鮮半島に生まれ育ち、10代で渡日して姉の家や菓子店等で働いていたところ、徴用により本件造船所に送られ、鉄板をつなぐ「カシメ」や設計図面を鉄板に書き写す現図工などの作業に従事していたと主張した。原告aは原爆投下時に寄宿舎の食堂へ向かう屋外におり、飛来した破片で腰を負傷したと述べ、原告bは本件造船所内の防空壕に避難中に被爆したと述べる。 長崎市長は、原告らの供述に一貫性を欠く部分があること、本件造船所の在籍記録が戦災等で残存していないこと、証人や裏付け資料がないことなどを理由に、いずれの申請も却下した。原告らは、国が昭和49年の402号通達により在外被爆者への適用を長年排除してきたこと、長崎地方法務局が朝鮮人労務者の未払金に係る供託書副本を廃棄したことが証明妨害に当たると主張した。 【争点】 1.原告らが原爆投下時に旧長崎市内に在り、被爆者援護法1条1号に該当するか(供述の信用性の評価)。 2.被告国の402号通達の発出・運用、その後の不作為、供託書副本の廃棄、および長崎市長の却下処分につき、国賠法1条1項の適用上違法と評価される行為があったか。 【判旨】 裁判所は、原告らの被爆者健康手帳交付申請却下処分取消しおよび交付義務付けの請求を認容し、国賠請求は棄却した。 原告aの供述については、来日の経緯、徴用により長崎へ移った経緯、本件造船所でのカシメ作業、寄宿舎の位置関係、原爆投下時に夜勤明けで飛来物により腰を負傷した点などが一貫しており、本件造船所の当時の状況や寄宿舎の所在とも整合し、背部に残る陥没状の負傷痕とも符合するとして、中核部分の信用性を肯定した。来日時期・年齢や治療経過の不一致については、韓国における数え年の慣行、70年以上の経過による記憶の減退、別の転落負傷との混同可能性などを踏まえれば、中核供述の信用性を減殺しないとした。 原告bについても、昭和18年10月から昭和20年2月までの本件造船所勤務は厚生年金記録により裏付けられ、それ以降の供述も一貫し具体的であり、マーキング小屋が爆心地から遠いe地区南端にあったため被害が比較的軽微であったとする供述は他の文献とも整合するとして、被爆時に本件造船所敷地内の防空壕にいたとの部分を含め信用できると判断した。そのうえで、両名はいずれも原爆投下時に旧長崎市の区域内に在ったと認められるから、法1条1号に該当し、本件各却下処分はいずれも違法で取り消されるべきであり、義務付けの訴えの要件も満たされるとした。 国賠法上の違法については、最高裁判例(昭和60年11月21日、平成5年3月11日)を引用し、行政処分が取り消されるべきものであっても、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったと認められる事情がある場合に限り違法となると判示した。そのうえで、原告らが申請に至った契機・時期に照らすと、402号通達やその後の不作為によって申請が妨げられたとは認められず、供託書副本の廃棄についても原告らの氏名が記載されていたか不明であるから証明妨害には当たらないとした。長崎市長の処分についても、第三者証明がないことのみで却下せず、聴取や調査を重ねて総合判断した以上、通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったとはいえないとして、国賠請求を棄却した。 本判決は、戦後70年以上を経過し証拠収集が著しく困難な在外被爆者の手帳申請において、長期経過による供述の細部の揺らぎと中核部分の信用性とを区別し、当時の造船所や寄宿舎の状況・身体に残る痕跡との整合性を丁寧に検討して被爆事実を認定した点に意義があり、在外被爆者援護の実務に重要な示唆を与えるものである。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。