一時金申請却下処分等取消請求事件,支援給付申請却下処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は昭和21年に中華民国河南省で出生した者であり、父Eは宮崎県に本籍を有する日本人、母Fは中華民国籍であったが昭和15年にEと中華民国の方式により婚姻したことで旧国籍法上日本国籍を取得した者である。Eは昭和13年に軍人として河南省に渡り、終戦後も帰国せずに中国で死亡し、Fも中国で死亡した。原告は平成22年に鳥取家庭裁判所倉吉支部の審判により就籍が許可され、鳥取県を本籍地とする戸籍が編成された。 原告は、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(以下「支援法」という。)に基づき、D市福祉事務所長に対して支援給付を、厚生労働大臣に対して一時金の支給をそれぞれ申請した。しかし、いずれも、原告が支援法2条に定める「中国残留邦人等」に該当しないことを理由として却下された。原告は支援給付却下処分について埼玉県知事への審査請求を経て厚生労働大臣に再審査請求をしたが棄却された。そこで原告は、各却下処分及び再審査請求棄却裁決の取消しを求めて本訴を提起した。支援法2条1項1号は、同法施策の対象となる「中国残留邦人等」として、昭和20年9月2日において「日本国民として本邦に本籍を有していたもの」等と規定しているところ、母FはEとの婚姻届が本邦に提出されずEの戸籍に妻として記載されていなかったため、本邦に本籍を有していなかった点が問題となった。 【争点】 原告が支援法にいう「中国残留邦人等」に該当するか、具体的には、支援法2条1項1号の「日本国民として本邦に本籍を有していたもの」との文言について、国籍要件とは別個独立の本籍要件を必要とするか否か、また同規定が憲法14条1項(平等原則)に反するか否か。 【判旨】 請求棄却。東京地裁は、支援法2条1項1号の「同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの」とは、その文理から、単に日本国籍を有していただけでなく、昭和20年9月2日において旧戸籍法に基づき本邦に本籍を有していた者をいうと解した。同規定の趣旨は、昭和20年9月2日の降伏文書調印により我が国の主権の及ぶ範囲が限定されたことを基準日として、同日において日本国民として本邦に本籍を有していた者は、ソ連軍の中国東北地域への侵攻開始(同年8月9日)以後の混乱等がなければ本邦に引き揚げていた可能性が高かったと評価できることから、これを支援施策の対象としたものである。本籍を有することは本邦への引揚げ可能性が高いことを示す指標であり、引揚援護の必要性を基礎付ける重要な事情といえる。 これを本件について見ると、原告自身は昭和21年生まれで昭和20年9月2日以前から中国に居住していた者ではないから類型Aには当たらず、母Fは中華民国籍から婚姻により日本国籍を取得したものの、EとFの婚姻届が在中国大使館・領事館等に提出された事実は認められず、Fが基準日において本邦に本籍を有していたとは認められないから、類型B・支援法施行規則1条の類型a及びbにも当たらない。Fは本邦本籍者に準ずる程度の引揚げ可能性があったといえる特段の事情もなく、類型cにも該当しない。 また、原告の憲法14条1項違反の主張についても、本邦に本籍を有することは本邦への引揚げ可能性の高さを示す指標であり、両親が本邦に本籍を有していた者に限り支援施策の対象とすることには相応の合理的根拠があるから、支援法2条1項1号は平等原則に反せず、適用違憲にもならないとした。さらに、本件再審査請求棄却裁決の取消請求については、行政事件訴訟法10条2項により原処分の違法を理由とする裁決取消請求はできず、裁決固有の瑕疵も認められないとして排斥し、原告の請求をいずれも棄却した。