都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3140 件の口コミ
下級裁

旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件

判決データ

事件番号
平成30行ウ8
事件名
旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件
裁判所
盛岡地方裁判所
裁判年月日
2019年1月17日

AI概要

【事案の概要】 本件は、岩手県上閉伊郡大槌町の住民である原告らが、同町の町長である被告に対し、大槌町旧役場庁舎(以下「本件旧庁舎」という。)の解体工事の執行および工事代金の支出の差止めを求めた住民訴訟(地方自治法242条の2第1項1号)である。 大槌町役場庁舎は、平成23年3月11日の東日本大震災に伴う津波により壊滅的被害を受け、庁舎内にいた役場職員28名が死亡するなどの甚大な被害が生じた。平成26年には一部解体工事が実施され、本件旧庁舎(延床面積約662㎡、2階建ての本庁舎部分)のみが残された。 被告は、平成27年の町長選において本件旧庁舎の解体を明言して当選した。その後、学識経験者・遺族等で構成された検討委員会、住民説明会、意見交換会等での議論を経て、平成30年3月15日の町議会3月定例会で解体関連費用4700万円に係る補正予算(以下「本件補正予算」という。)が可決され、同年5月29日には被告と請負業者との間で請負代金4091万円余の解体工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)が締結された。ところが、同年6月の工事開始直後、アスベスト事前調査不履践等の法令違反が判明して工事が中断し、その後、発じん性の高いレベル2のアスベストが含有されていることが判明したため、随意契約(地方自治法施行令167条の2第1項5号)によるアスベスト除去工事等が追加的に締結された。 原告らは、被告の解体決定には地方財政法8条(財産の効率的運用義務)に反する調査義務違反があり、アスベスト規制の潜脱もあることから本件請負契約は無効であり、また本件補正予算は地方自治法218条1項所定の「予算調製後に生じた事由」に基づかないものであって違法であると主張した。 【争点】 (1) 本件解体工事(事実行為)の差止めが住民訴訟の対象となるか。 (2) 本件請負契約が地方財政法8条の趣旨に反して私法上無効となるか、または解除事由・契約解消事由が認められるか。 (3) 本件補正予算が地方自治法218条1項に違反するか。 【判旨】 盛岡地方裁判所は、本件解体工事の執行の差止めを求める訴えを却下し、その余の請求(公金支出の差止め)を棄却した。 まず、解体工事自体の差止請求については、住民訴訟の対象は公金支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行等の財務会計行為に限定されるところ、解体工事は請負業者が行う物理的破壊という事実行為にすぎず、財務会計行為ではないから訴えは不適法であると判示した。 公金支出の差止めについては、支出負担行為たる契約に基づく履行としての支出命令が違法となるのは、契約が私法上無効であるとき、または取消権・解除権があるとき、あるいは契約に看過し得ない瑕疵があり相手方が解消に応ずる蓋然性が大きい等の特殊事情があるときに限られる、との最高裁判例(最判平成20年1月18日等)に従った枠組みを示した。 そのうえで、震災遺構は防災研究への高度な学術的貢献性を併有する例外的場合を除き本来的効用を喪失している物であって、その存廃は地域住民の意向を十分に尊重して決せられるべきものと解したが、本件では、長期にわたる検討委員会・意見交換会・住民説明会を経て、被告と議会の相互作用の末に町議会が解体の最終意思を明確に表明したと認められ、被告の判断に裁量権の著しい逸脱・濫用はないとして、地方財政法8条違反を否定した。アスベスト対策についても、本件変更契約、随意契約および本件アスベスト除去工事契約により事後的に法定手続が履践されたことで瑕疵は治癒していると判断した。随意契約の緊急性については疑義を残しつつも、毒性の強いアスベストの現存と震度4以下の地震でも崩落危険性があるとの調査結果に照らせば、同契約を無効とすべき特段の事情はないとした。 さらに、本件補正予算が「当初予算調製後に生じた事由」に基づくか否かは定かではないとしつつも、地方自治法218条は当初予算成立前の補正予算案提出を禁止していないうえ、議会の議決により予算として有効に成立している以上、その効力に影響はないと判示して、原告らの主張をすべて退けた。 本判決は、震災遺構の保存・解体という地域社会に深い分断をもたらす問題として、首長の裁量と住民意思の尊重、議会による統制の関係を整理したものとして、震災復興行政における住民訴訟の射程を示す実務的意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。