不認定処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、終末期医療における延命措置の不開始等を希望する旨を記載した「尊厳死の宣言書(リビング・ウイル)」の登録管理事業を中核業務とする一般財団法人である。原告は、平成27年12月、内閣総理大臣に対し、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)に基づく公益認定を申請した。申請事業は、①リビング・ウイルの普及啓発事業、②会員の宣言書を登録・管理する登録管理事業、③終末期医療に関する調査研究・提言事業の3つから構成され、公益目的事業比率は85.4%とされていた。 これに対し内閣総理大臣は、平成28年12月9日付けで不認定処分を行った。その理由は、終末期医療や尊厳死の捉え方は個々人により様々で社会的にも多様な考え方が混在し、延命措置の中止等に関する明確な法的位置付けもない現状において、登録管理事業を公益目的事業と認めれば、国が特定の立場に積極的評価を与えたと受け取られ、医師等が原告宣言書に沿った延命措置の中止等を求められた結果、刑事責任等を問われる法律上不安定な立場に置かれる懸念を払拭できない、というものであった。原告は本件処分の取消しと公益認定処分の義務付けを求めて提訴した。 公益認定制度は、一般社団・財団法人のうち公益目的事業を行う法人を行政庁が認定し、税制上の優遇等を与える仕組みであり、その審査は内閣府公益認定等委員会の答申を踏まえて行われる。 【争点】 ①登録管理事業が認定法2条4号の「公益目的事業」、特に「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当するか、②原告が認定法5条1号(主たる目的要件)及び8号(公益目的事業比率50%以上)の基準に適合するか、③認定処分の義務付けが認められるかが争われた。被告は、登録管理事業の受益者が限定的であること、及び医師等を法律上不安定な立場に置く懸念を主張した。 【判旨】 東京地裁は、本件処分を違法として取り消す一方、義務付け請求は棄却した。 まず登録管理事業の公益目的事業該当性について、本件ガイドラインの定めるチェックポイント(事業目的、受益の機会の公開、事業の質の確保、審査・選考の公正性等)に沿って検討し、原告の事業は15歳以上であれば誰でも利用でき、会費も高額でなく、医師等の関与により宣言書の質も確保されていると認め、事業の合目的性を肯定した。 争点の核心である「医師等に与える影響」については、公益認定は行政庁が申請事業を公益目的事業と認定する限度で積極的評価を与えるにとどまり、国が延命措置の中止等に特定の立場を支持することまで意味しないと整理した。そのうえで、厚生労働省や日本医師会等の各ガイドラインは一定の場合に延命措置の中止等を認めており、医師等がこれらに従う限り責任を問われる可能性が増大するとは解されず、医師等が公益認定を過剰に忖度して責任を問われる事態は稀であって一般的傾向とはいえないと判示した。また、原告宣言書以外にも自治体や公証人作成のリビング・ウイルが存在することも考慮した。 結論として、登録管理事業は「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当し、これを否定した本件処分は前提を誤ったものとして違法であると認めた。他方、原告が認定法5条1号・8号以外の各号適合性について具体的な主張立証をしていない以上、義務付けの本案要件を満たさないとして、認定処分の義務付け請求は棄却した。 本判決は、終末期医療における患者の自己決定権の尊重を支える事業について、公益認定の対象になり得ることを明示した点で実務的意義を有する。