AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人両名が共犯者らと共謀の上、金塊の取引のため福岡市内のビルに運搬してきた被害者らから、総額約7億6000万円相当の金塊160個、現金約130万円、バッグ・携帯電話機等を持ち去ったとされる事案である。 被害者3名は、金塊の買取ビジネスを営む雇用主や出資者ら(上位者)から委託を受け、現金を携えて東京都内から下関市内に赴き、取引相手から金塊160個を購入し、翌朝これを福岡市内のビル1階エレベーター前エントランスまで運搬した。そこに、事前に「POLICE」のワッペンや「機捜」の刺繍入りの黒色ベストを着用した被告人Aら実行役6名が近付き、「警察」と告げて所持品検査を装い、金塊入りキャリーケース5個のほか被害者Iの現金・バッグ・携帯電話機等をビル外に運び出した。被告人Bは現場周辺の車内で待機していた。被告人らは持ち去り後、対向車線を逆走するなどして高速道路に乗り入れ、山口県内の河川敷でキャリーケースや黒色ベスト等を投棄した。 被告人両名はいずれも窃盗の前科3犯を有し、被告人Aは前刑執行終了からわずか8か月余りで本件に及んでいた。 【争点】 主要な争点は4点である。第1に、被害者ら3名が金塊等を占有していたか(実際の支配者は東京にいる上位者ではないか)。第2に、被害者らが持ち去りに同意していたか否か。第3に、被告人らが被害者らの同意があると誤信していたか否か。第4に、実行行為に関与せず車内で待機していた被告人Bについて、被害者Iの私物の持ち去りにまで共謀が及んでいたか、である。弁護人は、被害者らは上位者の指示で運搬した使者にすぎず占有がない、あるいは上位者の事前了解のもとでの受渡しだった可能性がある等と主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被害者らが遠方から自ら購入代金を携え、金塊の入手・保管・運搬を直接担当し売却も自ら行う予定であったことから、社会通念上、被害者らが金塊等を実力的に支配し占有していたと認定した。被害者らと被告人らが一切面識がなく、待合せ時刻の調整もなく約1時間前から待ち伏せしていたこと、警察官を装った周到な偽装、被害者Iの私物まで持ち去っていること等から、被害者らに同意はなく、被告人らも同意がないことを認識していたと認定。被告人Bについても、金塊占有者の携行品を盗むという範囲で共謀があり、警察官を装って接触する以上金塊以外の携行品取得も織り込まれていたとして、私物窃取についても共謀共同正犯の責任を認めた。 量刑面では、被害額約7億6000万円がわが国の窃盗事件として類例を見ない莫大な額であること、多数人が関与し警察官を装った巧妙かつ大胆な計画的犯行であること、被告人Aは実行役の中で最も中心的役割を、被告人Bは情報伝達等で主導的役割を果たし、いずれも約1億円の最高額の報酬を得た主犯格であること、両名とも窃盗の前科3犯があり再犯性が高いことを重視し、求刑懲役10年に対し、被告人両名をいずれも懲役9年に処した。