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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成30行ケ10027
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年1月28日
裁判官
鶴岡稔彦高橋彩間明宏充

AI概要

【事案の概要】 本件は,特許第3905538号(発明の名称「油または脂肪中の環境汚染物質の低減方法,揮発性環境汚染物質低減作業流体,健康サプリメントおよび動物飼料製品」)を保有する被告BASF Aktiengesellschaftに対し,原告日本水産株式会社が無効審判を請求した事件の審決取消訴訟である。本件特許は,食用または化粧品用の海産油(魚油等)に含まれる臭素化難燃剤やPCB(ポリ塩化ビフェニル)といった環境汚染物質を,脂肪酸エステル・脂肪酸アミド・遊離脂肪酸などの「揮発性作業流体」を添加した上で150~270℃の温度でストリッピング処理(減圧蒸留)することにより低減させる方法等を内容とするものである。海洋汚染の進行により魚油に有害物質が蓄積することが問題化する中,サプリメントや医薬品用の魚油製品の品質を確保する技術として位置付けられていた。 原告は平成25年7月5日に請求項1,2,4ないし28について無効審判を請求し,特許庁は平成27年5月13日に一次審決を行ったが,被告がこれを争った前訴(平成27年(行ケ)第10190号)において,知財高裁は請求項1,2,4ないし6,9,12ないし21に係る部分等を取り消した。審理が差戻された特許庁は,平成30年1月18日,訂正を認めた上で請求項22ないし27の特許を無効とする一方,請求項1,2,4ないし6,9,12ないし21については無効審判請求は成り立たないとする本件審決を行った。原告はこれを不服として本訴を提起した。 【争点】 主たる争点は,①本件発明と甲第2号証(1990年発行のFish Oils In Nutrition所収のコレステロール除去に関する文献)記載の発明との相違点の認定および容易想到性の判断の当否,②本件発明と甲第3号証(米国特許第3082228号明細書)記載の発明との相違点の認定および容易想到性の判断の当否である。特に,甲2発明はサケ頭油にリノール酸を添加してコレステロールを分離する方法,甲3発明は魚油に単純エステル等を添加して臭気物を除去する方法であったところ,これらを踏まえ本件発明の「臭素化難燃剤およびPCB」という環境汚染物質の除去に想到することが容易であったかが問題となった。 【判旨】 知財高裁は,原告の取消事由をいずれも認め,本件審決のうち請求項1,2,4ないし6,9,12ないし21に係る部分等を取り消した。まず,本件優先日(平成14年7月11日)当時,ほとんど全ての精製前の海産油にPCBおよび臭素化難燃剤が含まれていることは周知の客観的事項であったと認定し,甲2発明のサケ頭油や甲3発明の魚油を「臭素化難燃剤およびPCBからなる群より選択される環境汚染物質」を含むものとすることは当業者が容易に想到し得たとした。次に,真空ストリッピングは物質ごとの蒸気圧を利用して分離する技術であり,コレステロールが200~260℃で蒸留される条件下では,より揮発性の高いPCBおよび臭素化難燃剤も同様に気化することは当業者に容易に理解できたと判示した。さらに,1968年発行の文献等から通常の脱臭が220~260℃で行われること,PCBが175℃で検出レベル未満に減少すること,PCBと臭素化難燃剤の揮発性が同程度であることが周知であったことから,ストリッピング温度を175~260℃の範囲とすることも当業者が容易に想到できたとし,これは本件発明の温度範囲(150~270℃)に含まれると結論付けた。また,本件発明の効果についても,揮発性の高い同伴剤を添加して低温で蒸留できるという点は甲2・甲3発明が既に実現しているか予測可能な範囲にとどまり,顕著な効果とはいえないとした。以上から,本件発明1,19およびこれらを引用する請求項は当業者が容易に発明できたものであり,本件審決の判断には結論に影響を及ぼす誤りがあるとして,審決のうち原告指摘部分を取り消し,訴訟費用を被告の負担とした。本判決は,魚油精製における同伴剤を用いた蒸留技術について,周知の海洋汚染の事実と蒸気圧に基づく分離の原理を組み合わせた場合の進歩性判断の枠組みを示したものとして実務的意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。