都市計画事業認可処分取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成27行ウ455
- 事件名
- 都市計画事業認可処分取消請求事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年1月30日
- 裁判官
- 清水知恵子、進藤壮一郎、池田美樹子
AI概要
【事案の概要】 本件は,関東地方整備局長が平成27年1月20日付けで東京都(被告参加人)に対してした都市計画事業認可の取消しを求めた事案である。対象事業は,東京都市計画道路事業補助線街路第86号線(全長約5.9キロメートル)のうち,東京都北区内の延長620メートルの区間について,現状約7メートルの道路幅員を20メートルに拡幅し,2車線の車道部と歩道部を整備するものであった。当該都市計画道路は昭和21年の戦災復興都市計画街路として追加決定された後,昭和41年に建設大臣による全面的な都市計画街路の見直しに際して変更決定がされ,その後の昭和43年決定,昭和56年決定,平成元年決定を経てもなお本件事業区間の計画は維持されてきた。参加人は,老朽木造建築物が密集する木密地域の防災性向上を目的とした「木密地域不燃化10年プロジェクト」に基づき,本件道路を「延焼遮断帯」として整備すべき「特定整備路線」に指定し,本件事業認可を申請した。これに対し,事業地内の地権者・居住者や近隣住民ら111名の原告らが,昭和21年決定の不存在・違法,昭和41年決定後の社会情勢の変化による計画の正当性喪失,本件道路の必要性欠如,地域コミュニティ破壊等を主張して,本件事業認可の違法を主張し,その取消しを求めた。 【争点】 争点は,(1)原告らのうち事業地から離れた地域に居住する者の原告適格の有無,(2)昭和21年決定の存否及び適法性,(3)本件事業認可の前提となる都市計画決定(昭和41年決定)の適法性,(4)昭和41年決定後の事情変化により本件都市計画の正当性が失われたといえるか,である。 【判旨】 裁判所は,原告番号79から111までの原告らの訴えを却下し,その余の原告らの請求を棄却した。原告適格については,最高裁平成17年判決の判断枠組みを踏まえ,都市計画事業認可に関する都市計画法の規定は,事業に伴う大気汚染・騒音・振動等により事業地周辺住民に健康又は生活環境の著しい被害が発生することを防止する趣旨を含むとし,事業地から30メートル以内の地域に居住する住民には原告適格を認めたが,それより離れた地域の住民については,本件道路の構造・規模(2車線,1日当たり4000台以上1万台未満の交通量を許容する程度)に照らし,著しい被害を直接的に受けるおそれがあるとは認められないとして原告適格を否定した。昭和21年決定については,戦災復興院告示第15号の存在や当時の記録から決定の事実が認められ,昭和20年勅令第671号による臨時特例の改正により内閣総理大臣が主務大臣であったこと,内閣の認可も不要とされていたことから,手続的違法はないと判断した。都市計画決定の適法性については,最高裁平成18年判決を引用し,都市施設の規模・配置に関する判断は行政庁の広範な裁量に委ねられており,重要な事実の基礎を欠く場合や社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り違法となるとの判断枠組みを示した上で,昭和41年決定は約9年にわたる特別委員会の審議と交通需要予測に基づく合理的な再検討の結果であり,裁量権の逸脱・濫用は認められないとした。昭和41年決定後の事情変化についても,都市計画決定後相当の長期間を経過し,計画の必要性・合理性がおよそ失われ計画変更すべきことが明白である等の特段の事情がある場合に限り事業認可が違法となり得るとの判断枠組みを示した上で,本件道路は一貫して「延焼遮断帯」として必要性が認められ,平成24年の不燃化実施方針策定後は緊急整備の対象とされており,計画変更すべきことが明白な事情は認められないと判示した。公害防止協定違反の主張についても,協定は工場操業に関するもので道路拡幅工事を禁止する趣旨ではないとして排斥し,本件事業認可に違法はないと結論づけた。