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知財

損害賠償請求事件

判決データ

事件番号
平成28ワ37782
事件名
損害賠償請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2019年1月31日

AI概要

【事案の概要】 本件は、高性能掃除機等で知られるイギリスのダイソン テクノロジー リミテッド(原告)が、東芝ライフスタイル株式会社(被告)に対し、被告が製造販売するバッテリ式のコードレス掃除機(製品番号「VC-CL100」)に用いられているモータの制御方法が、原告の保有する二件の特許権(発明の名称「電気機械の制御」=特許第5189132号、同「高速電気システム」=特許第5189133号)を侵害するとして、民法709条に基づき、損害賠償金6億2236万円(一部請求)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 本件特許の中核は、単相永久磁石モータを高効率かつ高速で駆動するための制御技術にある。具体的には、巻線の逆起電力のゼロ交差よりも前に励起電圧を印加する「先進角」と、励起後に電流を惰性で流す「フリーホイール角」を、バッテリの電圧変化に応じて動的に変更することで、電圧が低下しても出力電力を一定に保つ点に特徴がある。原告は、コードレス掃除機の性能向上の鍵となる要素技術と位置付けている。 【争点】 主たる争点は、被告製品のモータ制御方法が本件各特許発明の技術的範囲に属するか否かである。とりわけ、本件特許1の請求項1に係る構成要件のうち、「励起電圧の変化に応答してフリーホイール角を変更する」こと(1C)、及び「励起電圧の低下に応答してフリーホイール角が減少する」こと(1D)の充足性が中心的論点となった。 原告は、被告製品について0.5秒の測定期間にわたる平均値をとると、入力電圧が約17V以上の範囲では電圧低下に応じてフリーホイール期間が減少する関係が観察されるとの実験結果を提出し、構成要件を充足すると主張した。これに対し被告は、被告製品は励起電圧そのものを測定して制御しているのではなく別のパラメータを対象として通電時間を制御しているにすぎず、半サイクルごとのフリーホイール期間は大きく変動するから、規則的関係は存在しないと反論した。 【判旨】 東京地方裁判所は、原告の請求を棄却した。 裁判所はまず、構成要件1C及び1Dの文言及び明細書の記載を踏まえ、当該構成要件は「1回の半サイクル期間」における励起電圧とフリーホイール角の関係を定めたものであると解釈した。その上で、「応答して」という文言の国語的意義や明細書の趣旨に照らし、励起電圧そのものを測定対象としない制御であっても、結果として励起電圧の変化に伴いフリーホイール角が変化するという規則的ないし原則的な関係があれば構成要件を充足し得るとしつつ、技術常識上の誤差を超える大きなばらつきがある場合には、平均値による立証だけでは規則的関係の存在を認めるには足りないとした。 本件の被告製品については、同一の入力電圧の下でも、1回の半サイクルごとのフリーホイール期間が約20~45μ秒ないし約35~55μ秒の範囲で相当程度変動し、入力電圧が低下しても当該半サイクルにおけるフリーホイール期間がむしろ増加する可能性も想定されると認定した。こうした変動の大きさからすれば、原告が依拠する長時間平均のデータは、1回の半サイクル期間におけるフリーホイール期間を正しく代表しているとは認められず、励起電圧の変化とフリーホイール角の減少との間に規則的・原則的な関係があるとは認められないとした。 したがって、被告製品の制御方法は構成要件1C及び1Dを充足せず、本件特許発明1-1の技術的範囲に属しない。裁判所は、これを前提として本件特許1のその余の請求項に係る発明及び本件特許2の各発明についても技術的範囲に属しないと判断し、特許無効の抗弁等その余の争点を判断するまでもなく、原告の請求をすべて棄却した。本判決は、半サイクル単位で特定された構成要件の充足を長時間平均データで立証する限界を示した事例として、先進的モータ制御技術をめぐる特許侵害訴訟の実務に示唆を与えるものである。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。