特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「容器」とする特許権(特許第5305693号)を保有する一審原告(食品用容器メーカー)が、一審被告の製造・販売する食品包装用容器(弁当や総菜などを入れる発泡積層シート製の容器)が本件特許権を侵害するとして、製造・販売等の差止め、製品および製造用金型の廃棄、ならびに不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。 本件特許発明は、熱可塑性樹脂発泡シートに熱可塑性樹脂フィルムを積層した素材で成形された容器において、蓋を嵌める突出部(フランジ部)の端縁部の上面側にジグザグ状の凹凸形状を形成する点に特徴がある。これは、容器を切り抜いたときに樹脂フィルムの切断面が外側に鋭く突出して使用者の指などを裂傷するおそれがあったことを課題とし、端縁部上面に凹凸を設けてフィルム端縁をジグザグ化することで怪我を防止し、他方で下面を平坦に保つことで蓋の強固な止着を実現するものである。 原審である東京地方裁判所は、一審被告製品が本件発明の技術的範囲に属するとして差止請求を認容し、特許法102条3項に基づく損害賠償として実施料相当額1694万4217円と弁護士費用170万円の合計1864万4217円を認めた一方、被告製品および金型は既に存在しないとして廃棄請求を棄却した。これを不服として双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、①被告製品が本件発明の構成要件(特に端縁部を圧縮して薄肉化する構成C、凸形状の高さ0.1〜1mmの数値限定Dなど)を充足するか、②本件特許に進歩性欠如・サポート要件違反・明確性要件違反等の無効理由があるか、③差止および廃棄の必要性、④特許法102条3項に基づく相当実施料率である。 一審被告は、構成要件Cの「下位となるように」との文言は圧縮工程を経て下位となったものに限る、「凸形状の高さ」は端縁部下面から凸部頂点までの長さを意味すると解すべきなどと主張し、また発泡積層シート容器を扱う乙20文献の発明や樹脂フィルム容器を扱う乙19文献の発明に周知技術を組み合わせることで容易に想到できた(進歩性欠如)と主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、双方の控訴をいずれも棄却した。 まず、構成要件Cについては、「下位となる」状態が圧縮のみによって得られる場合に限定されると解する根拠はなく、圧縮以外の方法でその状態を得る場合も含むと解するのが相当であるとした。「凸形状の高さ」についても、凹凸形状の特徴を規定する数値限定である以上、「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味すると解するのが自然であり、明細書の図面の矢印表記のみをもって端縁部下面からの高さと解することはできないとした。 進歩性欠如の主張については、乙20の1発明および乙19の1発明のいずれを主引用例としても、発泡積層シートの上面側にのみ凹凸形状を形成し下面側を平坦にするという本件発明の構成には想到容易性が認められないとして排斥した。サポート要件違反・明確性要件違反・実施可能要件違反その他の無効主張もいずれも理由がないとした。 差止請求については、一審被告が過去に同一の商品名で被告製品を販売していた以上、凹凸形状のないものが別途存在したとの主張は認められず、被告製品全量が侵害対象となると判断した。廃棄請求は、平成28年6月までに製造販売が終了し現時点で製品および金型が存在しないとして、認められないとした。 実施料率については、「セーフティエッジ」加工の顧客誘引力、特許登録件数、類似技術分野の実施料率データ等を総合し、原判決の認定額1694万4217円と弁護士費用170万円を維持した。以上により、原判決が相当として双方の控訴を棄却した。