選挙無効請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行ツ92
- 事件名
- 選挙無効請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2019年2月5日
- 裁判種別・結果
- 判決・棄却
- 裁判官
- 戸倉三郎、岡部喜代子、山崎敏充、林景一、宮崎裕子
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、平成29年7月2日に施行された東京都議会議員一般選挙について、江東区選挙区の選挙人である上告人が、同選挙の江東区選挙区における選挙の無効を求めて提起した選挙無効訴訟である。都道府県議会の議員の選挙区及び定数は、条例で定めるものとされ、公職選挙法15条8項は、各選挙区における議員の数を「人口に比例して」条例で定めることを原則としつつ、「特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる」としている。また、同法271条は、昭和41年1月1日当時に設けられていた選挙区について、議員1人当たりの人口の半数に達しなくなった後も、当分の間、当該区域をもって1選挙区を設けることを認める特例選挙区の制度を置いている。東京都は、条例により42選挙区に127人の定数を配分し、大島町、八丈町、小笠原村など9町村から成る島しょ部を1選挙区(島部選挙区)として特例選挙区に存置してきた。本件選挙当時、島部選挙区の配当基数は0.249と0.5を大きく下回り、最大較差は約5.46倍に達していた一方、特例選挙区を除く選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.48であった。上告人は、島部選挙区を特例選挙区として存置したことが公職選挙法271条に違反し、また定数配分規定が同法15条8項及び憲法14条1項等に違反して無効であると主張した。 【争点】 島部選挙区を特例選挙区として存置したことが公職選挙法271条に違反するか、及び本件条例の定数配分規定が同法15条8項や憲法の投票価値の平等の要請に違反するかが争われた。特に、配当基数が0.25を切り、最大較差が5倍を超える島部選挙区の存置が、都道府県議会の裁量権の合理的行使として是認できるかが中心的な論点となった。 【判旨】 最高裁は、本件上告を棄却した。特例選挙区の設置は都道府県議会の裁量に委ねられており、配当基数が0.5を著しく下回る場合には裁量の限界を超えると推定されるが、独自の地域代表選出の必要性と合区の困難性を総合判断して決すべきものとした。島しょ部は離島として自然環境・社会・経済の状況が東京都の他地域と大きく異なり特有の行政需要を有する一方、地理的状況から他市町村との合区が相当困難であることを踏まえ、都議会があり方検討会での検討を経て島部選挙区を特例選挙区として存置したことは、裁量権の合理的行使として是認できるとした。また、特例選挙区以外の最大較差1対2.48は、前回選挙から拡大したが、これは千代田区が特例選挙区から外れたことによるもので、逆転現象も12通りから6通りに減少しており、投票価値の不平等が一般に合理性を欠く程度に達していたとはいえないと判断し、定数配分規定は適法であり憲法にも違反しないとした。 【補足意見】 裁判官林景一の意見は、結論には同調するものの、人口比例原則の観点から懸念を示した。国政選挙では人口比例原則を厳格に考えるべきだが、地方議会選挙では地域代表としての性格から一定程度の緩和を認める余地があるとしつつ、島部選挙区の配当基数が0.25を切り最大較差が5.46倍に達している現状は「例外中の例外」であり、今後人口減少により較差が拡大し続ければ合区を検討すべきであると指摘した。また、本件選挙で6通り残る逆転現象、特に定数差2人の逆転現象については合理的説明が欠けており、その継続は許容できないとして早急な是正を求めた。