要指導医薬品指定差止請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29行コ254
- 事件名
- 要指導医薬品指定差止請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年2月6日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 齊木敏文、石井浩、間史恵
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)に基づいて要指導医薬品として指定された製剤について、インターネット販売事業者である控訴人が、その指定の取消しと郵便等販売をする権利(地位)の確認を求めた行政訴訟の控訴審である。 要指導医薬品制度は、平成25年法律第103号による改正で新設されたもので、一般用医薬品のうち、いわゆるスイッチ直後品目(医療用医薬品から一般用医薬品に転換された直後のもの)やダイレクト直後品目など、一般用医薬品としての安全性評価が確定していない医薬品を特別に指定し、薬剤師による対面での情報提供及び薬学的知見に基づく指導を義務付け、郵便等販売(インターネット販売を含む)を禁止するものである(本件対面販売規制)。 控訴人は、インターネットを通じた医薬品販売を事業の柱とする事業者であり、厚生労働大臣による要指導医薬品指定処分の取消しを求めるとともに、当該製剤について郵便等販売を行う権利の確認を求めた。原審(東京地裁)は、取消しの訴えは行政処分性を欠くとして却下し、確認の訴えは本件対面販売規制が憲法22条1項に違反せず本件各指定も適法であるとして棄却した。控訴人はこれを不服として控訴し、当審では新たに指定された製剤についても訴えを追加した。 【争点】 主たる争点は、①要指導医薬品の指定が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか、②本件対面販売規制が職業選択の自由を定める憲法22条1項に違反するか、③対面販売事業者とネット販売事業者を異別に取り扱う本件規制が平等原則を定める憲法14条1項に違反するか、④本件各指定の手続要件及び実体要件を満たしているかである。特に、対面販売とインターネット販売の間に情報収集・提供の質において有意な差があるかが実務上の焦点となった。 【判旨】 東京高裁は控訴を棄却し、当審で追加された指定取消しの訴えを却下、確認請求を棄却した。要指導医薬品の指定は、具体的な有効成分により特定してされるもので、不特定多数を対象に一般的に適用されるから実質的に法規の性質を有し、特定人の具体的権利利益を直接制限するものではなく、行政処分には当たらないと判断した。 憲法22条1項適合性については、本件対面販売規制の対象となる要指導医薬品は品目数・市場規模とも極めて限定的(一般用医薬品市場の0.6%程度)で、一定期間経過後は一般用医薬品に移行すること、ネット販売事業者も店舗での対面販売は可能であることから、職業選択の自由そのものではなく職業活動の内容・態様に対する規制にとどまると位置付けた。その上で、スイッチ直後品目等は健康被害の発生要因等が未解明であり、薬剤師が購入者と対面して双方向で柔軟かつ臨機応変なやり取りをし、使用者の状態を的確に把握した上で情報提供・指導を行う必要性・合理性が認められるとして、規制目的を保健衛生上の危害防止とし、立法府の合理的裁量の範囲内であると判断した。 憲法14条1項適合性についても、規制の必要性と合理性が認められ、ネット販売事業者も店舗対面販売は可能であることから不当な差別には当たらないとした。本件各指定の手続要件・実体要件についても、薬事・食品衛生審議会における審議は適切に行われており、厚生労働大臣の専門技術的裁量の範囲を逸脱するものではないと判断した。 本判決は、医薬品ネット販売規制の合憲性に関する最高裁平成25年1月11日判決(第二小法廷)以後、新設された要指導医薬品制度に対して司法判断を示した重要判例であり、限定的・一時的な規制であることを理由に緩やかな審査基準を採用した点に特色がある。