強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が共犯者Aと共謀の上、知人である被害者B(当時53歳)を殺害して金品を強取し、死体を遺棄した上、被害者名義の仮想通貨口座から被告人名義の口座にビットコインを不正送金して財産上不法の利益を得たという強盗殺人、死体遺棄、電子計算機使用詐欺の事案である。 被告人は、被害者からビットコイン関連のネットワークビジネスの勧誘を受けていたが、被害者が相当額のビットコインを保有していることを知り、これを奪うために殺害を計画した。被告人は、平成29年6月上旬にインターネットで「死体 埋める」などと検索し、親しい友人のAに「殺したい女性がいる。2000万円くらいビットコインを持っている」などと告げて犯行への協力を求めた。当初予定した6月12日はAが怖じ気づいて辞退したため中止したが、被告人は犯行を断念せず、同月18日に被害者を呼び出した。 被告人は、車内で催涙スプレーを被害者の顔に噴射し、病院に着いたふりをして被害者を車外に出させた後、Aと協力して被害者を車のトランクに押し込み、所持していた現金約5万円、商品券、スマートフォン、タブレット、ノート等42点を強取した。その後、滋賀県犬上郡内の河川敷付近で、Aに馬乗りになって両手で頸部を絞めさせ、さらにUSBケーブルを巻き付けて絞めるなどして被害者を窒息死させた。遺体はあらかじめ用意していたキャリーバッグに入れ、親族が管理する別荘に運び、同月20日には油圧ショベルで地面に穴を掘って土中に埋めた。 さらに被告人は、奪ったノートに記載されていたパスワード等を用いて、同年7月3日と5日の2回にわたり、仮想通貨交換業者の取引システムに虚偽の情報を与え、被害者名義口座から被告人名義口座に合計1.25BTCのビットコインを不正送信させた。 【争点】 主たる争点は、被告人の責任能力の有無である。弁護人は、被告人は解離性障害により責任能力がなかった合理的疑いがあり無罪である旨主張し、犯行動機が理解不能で、行為の善悪の理解が異常であり、犯行時の人格が普段と異質であった点を指摘した。また、殺害行為のうちUSBケーブルで頸部を絞めた点についても、被告人がAと一緒に行ったか、A一人で行ったかが争われた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人には精神障害による入通院歴や生育歴上解離性障害を疑わせる事情がなく、犯行時の記憶欠落もなく、Aの供述からも普段と異なる様子はうかがわれないことから、解離性障害の疑いがある旨の証人Dの供述は信用できないと判断した。また、「被害者は魔物で倒すのは正しいこと」等の被告人の供述は、犯行をゲームに例えたにすぎず、動機の異常性や善悪理解の異常を示すものではないとして、完全責任能力を認めた。 量刑については、本件を利欲的で計画性の高い凶悪な犯行と評価し、被告人が死体処理をインターネットで事前に調べ、Aを犯行に引き込み、キャリーバッグを準備し、催涙スプレーで被害者を制圧し、殺害の大半をAに実行させつつ自らもUSBケーブルで頸部を絞めるなど犯行を主導した主犯であると認定した。Aが怖じ気づいて懇願したにもかかわらず犯行を断念しなかった点からも、犯意は強固で人命軽視の態度が甚だしいとした。被害者の苦痛・恐怖・絶望感は計り知れず結果は重大であり、遺族が厳重処罰を求めるのも当然とした上で、反省が深まっているとはいえず、若年であることを踏まえても酌むべき事情は乏しいと評価した。被害者1名の強盗殺人の量刑傾向も踏まえ、被告人を無期懲役に処した。