発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、音楽レコード製作者である原告ら5社(エイベックス・エンタテインメント、キングレコード、徳間ジャパンコミュニケーションズ、バップ)が、氏名不詳者によってファイル交換共有ソフトを用いた違法アップロードが行われたとして、そのインターネット接続サービスを提供していた被告(ソフトバンク株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事案である。 原告らは、安室奈美恵、angela、Perfume、楠田亜衣奈らの実演家が歌唱する楽曲を収録した各音楽CDを日本全国で発売したレコード製作者であり、著作権法96条の2に基づく送信可能化権を有していた。氏名不詳の発信者らは、平成30年6月から9月にかけて、これらのレコードを圧縮・複製したファイルを自己のコンピュータに蔵置した上、被告の提供するインターネット接続サービスを利用してファイル交換共有ソフトに接続し、不特定多数の利用者からの求めに応じて自動的に送信し得る状態に置いた。原告らは、発信者に対して損害賠償請求を行うため、被告が保有する発信者の氏名、住所、電子メールアドレスの開示を求めた。 プロバイダ責任制限法4条1項は、権利侵害情報の流通により自己の権利を侵害されたと主張する者が、侵害の明白性および正当な理由がある場合に、経由プロバイダに対して発信者情報の開示を請求できると定めており、匿名の権利侵害者に対する権利行使の端緒を確保するための制度である。 【争点】 主たる争点は、発信者情報のうち電子メールアドレスの開示まで必要性が認められるかである。被告は、仮に開示が認められるとしても住所の開示で足り、電子メールアドレスは不要であると主張した。 【判旨】 東京地裁は、本件各発信者がファイル交換共有ソフトを介して本件各レコードの複製ファイルを送信可能な状態に置いた行為は、原告らが有する送信可能化権を侵害するものであると認定した上、被告がプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たることおよび本件各発信者情報を保有していることを認定し、原告らに発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断した。 電子メールアドレスの必要性についても、被告が保有する氏名または名称および住所に関する情報が正確性を欠くなどして発信者の特定が不十分な場合に、電子メールアドレスによって発信者を正確に特定できる可能性があるから、電子メールアドレスは発信者の特定および原告らの権利行使に資する情報であるとして、電子メールアドレスを含めた本件各発信者情報全体について開示を受けるべき正当な理由があると認め、原告らの請求をいずれも認容した。