盗品等有償譲受け(予備的訴因:盗品等保管)被告事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29わ2955
- 事件名
- 盗品等有償譲受け(予備的訴因:盗品等保管)被告事件
- 裁判所
- 大阪地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年2月13日
AI概要
【事案の概要】 本件は、長年美術商を営んできた被告人が、鉄道会社の駅構内に展示されていた絵画を盗んで入手した知人から代金の一部として400万円を支払って譲り受けたとして、盗品等有償譲受け罪(主位的訴因)で起訴された事案である。予備的訴因として盗品等保管罪も追加された。 被告人は、平成27年3月、乙鉄道会社の駅構内に展示されていた評価額5000万円相当の絵画の購入を希望して同社に交渉したが、売却対象外として断られた。その後、岐阜の美術商を介して知り合ったAに絵画の入手を依頼したところ、Aは知人Dを介して別の者に絵画を窃取させ、同年10月13日、大阪市内の駐車場で被告人に引き渡し、被告人は代金の一部として400万円を支払った。被告人は絵画を受け取った当日、交際相手C方に赴き、絵画が盗品であるかもしれない旨を打ち明け、翌日には弁護士に相談、さらに乙鉄道会社に匿名で買戻しを持ちかけるなどの行動をとった。絵画はその後C方で保管され、平成29年3月15日の捜索差押えで発見された。 【争点】 主要な争点は、被告人が絵画譲受け時に盗品であることを未必的にでも認識していたか(主位的訴因の故意の存否)であり、予備的に譲受け時点で認識がなかったとしても、その後盗品性を認識したうえで保管を継続した行為が盗品等保管罪を構成するかが問題とされた。 検察官は、Aとの事前の合意や譲受け状況の不自然さ等から譲受け時の盗品性認識を主張し、仮にそうでなくても事後の認識下での保管継続により保管罪が成立すると主張した。弁護人は、譲受け時の認識は立証されておらず、かつ保管開始が売買による有償取得であって本犯のための委託によるものでないから保管罪も成立しないと反論した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、盗むことを合意したとするA供述について、窃盗犯本人が自己の責任軽減や被告人への悪感情から虚偽を述べる動機があること、核心部分の供述があいまいで迫真性を欠くこと、関係証拠と整合しない部分があることから、信用性は高いとはいえないとした。他方、被告人供述は、譲受け後に直ちに弁護士に相談し、乙鉄道会社への返還を試みるなど、譲受け時に盗品と認識していたことと整合しない行動と符合しており、容易に排斥できないとした。譲受け当日にCに盗品の疑いを打ち明けた事実も、譲受け後に気付いて善後策を考えた可能性を否定しきれず、譲受け時の認識を強く推認するものではないと判断し、主位的訴因を認めなかった。 予備的訴因については、盗品等保管罪における「保管」とは委託を受けて本犯のために盗品を保管することをいうと解したうえで、本件における被告人の占有取得は有償取得である売買によるものであって、本犯から委託を受けて保管を開始したものではないから、その後盗品性を認識して保管を継続したとしても盗品等保管罪は成立しないとした。 以上から、主位的・予備的いずれの訴因についても犯罪の証明がないとして、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪を言い渡した(求刑は主位的・予備的いずれも懲役2年及び罰金50万円)。本判決は、盗品等保管罪の成立要件として本犯のための委託に基づく保管開始を要求し、有償譲受け目的での占有取得後に盗品性を認識しても事後的に保管罪は成立しないことを明確にした点で、盗品等罪の法的性格に関する実務上の意義を有するものといえる。