不正競争行為差止等,損害賠償,損害賠償等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、ゴミ貯溜機(ゴミ圧縮処理装置)を製造販売する会社であり、自社製品に関する図面情報、CADデータ、PLC(制御機器用プログラム)等の技術情報(以下「本件技術情報」)を保有していた。被控訴人P2は控訴人の元従業員で、平成26年9月に退職した。被控訴人銀座吉田は、平成6年頃から香港・シンガポール・中国における控訴人製品の唯一の代理店として販売とメンテナンスを担当していた。被控訴人太陽工業は控訴人に部品を供給していた業者であり、被控訴人サン・ブリッドも関連業者である。 控訴人は、被控訴人らが本件技術情報を不正に使用して控訴人製品の模倣品である本件製品1、2を製造し、中国成都のショッピングセンター等に納入したと主張。そこで、不正競争防止法(以下「不競法」)上の営業秘密侵害を理由に、ゴミ貯溜機の製造差止め・廃棄、P2による情報使用・開示の差止め、約4442万円の損害賠償等を、また被控訴人銀座吉田に対しては商品表示に関する商標権侵害を理由とする標章使用差止め・1000万円の損害賠償を求めた。原審(大阪地裁)はこれらの請求をいずれも棄却し、控訴人が控訴。当審では民法709条の一般不法行為に基づく損害賠償請求を選択的に追加した。 【争点】 中心的争点は、本件技術情報が不競法2条6項の「営業秘密」、とりわけ「秘密として管理されている」(秘密管理性)と認められるかである。付随して、各被控訴人の不正競争行為の成否と損害額、被控訴人P2の秘密保持契約違反の成否、営業秘密に当たらない場合でも民法709条の一般不法行為が成立するか、さらに被控訴人銀座吉田による商標権侵害の成否が争われた。 【判旨】 大阪高裁は控訴を棄却し、当審追加請求も棄却した。 まず秘密管理性について、控訴人社内では情報の限定的アクセスや就業規則・誓約書による秘密保持義務が認められるものの、外注先との関係では秘密保持契約を締結している例が平成14年から21年にかけての数通にとどまり、部品供給を受けていた被控訴人太陽工業らとの間では契約締結の形跡がないと認定。また、長年にわたり代理店として図面等を多数交付してきた被控訴人銀座吉田との間でも、秘密保持契約を締結した形跡がなく、取引終了通知時にも図面の返還・廃棄を求めていないことから、控訴人は被控訴人銀座吉田に対し技術情報を秘密として管理すべきものと表明していなかったと判断。PLCプログラム等一部の情報のみを別異に扱っていたとも認められないとして、本件技術情報は全体として秘密管理性を欠き、不競法上の営業秘密に該当しないと結論づけた。 次に、他事業者が事業上入手した技術情報の使用は本来自由であり、保護のための手立てを講じていなければ「認識可能性」のみで営業秘密として保護されるとは解せないとした。したがって不正競争行為を前提とする差止・廃棄・損害賠償請求はいずれも理由がない。 P2の秘密保持契約(本件確認書)違反についても、控訴人から情報を持ち出したと推認するに足りる証拠はないとした。 当審追加の民法709条請求については、不競法が事業者間の公正競争を確保するため営業秘密として保護される情報と規制対象行為の範囲を画しているのであり、不競法上の営業秘密に該当しない情報の利用行為は、別個の法律上保護される利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しないと判示した。 商標権侵害の点も含め、原判決の判断を相当として、本件控訴及び追加請求をすべて棄却した。本判決は、営業秘密の保護を受けるためには、対外的な取引関係における秘密保持契約の締結など客観的な管理措置が不可欠であり、保有者の主観や相手方の認識可能性のみでは秘密管理性は認められないとする実務上重要な指針を示したものである。