損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(株式会社アイランド)は、自社が販売する婦人服(パーティドレス等7商品)の形態を、控訴人株式会社オフィスカワノが「GIRL」ブランドのインターネット通販を中心に模倣して販売したと主張し、同社に対しては不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に当たるとして法4条・5条1項に基づき、代表取締役である控訴人Xに対しては悪意または重過失により任務懈怠があったとして会社法429条1項に基づき、連帯して損害賠償を求めた事案である。請求額は損害金2億9098万円余の一部である2億6389万円余と遅延損害金であった。原審(東京地裁)は、7商品のいずれについても形態の実質的同一性および依拠性を認め、1億4044万円余および遅延損害金の支払を命じた。控訴人らは、個々の商品について形態の相違点を主張し、また一部商品は第三者(広服貿易、スカイファースト社、SKM社等)から仕入れた既製品であって善意無重過失の転得者(法19条1項5号ロ)に当たるなどと主張して控訴に及んだ。 【争点】 争点は、第一に各控訴人商品と被控訴人商品との形態の実質的同一性の有無であり、控訴人らは着こなしのバリエーションの相違、花柄モチーフの有無、シルエットの相違、素材由来の光沢・質感の相違、色彩の相違、フラウンスの長さや形状の相違等を指摘した。第二に、控訴人商品1・5等について控訴人会社が善意無重過失の転得者に当たるか、第三に、販路がインターネット通販中心であることを踏まえた法5条1項ただし書による損害額推定の覆滅割合であった。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却し、原判決を維持した。形態の実質的同一性については、着こなしの多様化や素材の違い、微細なフラウンス長の相違等は、両商品の基本的形態および特徴的部分における一致を前提とすれば、需要者が受ける印象を左右するほどの差異とは認められないと判断した。控訴人商品4の花柄モチーフの欠落についても、花柄を除いた部分が特徴的であり細部まで一致している以上、需要者に被控訴人商品と同じ印象を与えるとして実質的同一性を肯定した。依拠性については、被控訴人が年間90億円超の売上げと2億3000万円超の広告費を投じる著名ブランドであり、業界内で周知であったこと、7点もの商品が実質的に同一の形態で販売されていたこと等から偶然の一致とは考え難いとして全商品につき依拠性を認めた。善意無重過失の転得者該当性については、請求書等の客観的証拠が一切提出されていないこと、控訴人会社が雑誌インタビューやウェブページで自社デザイン・自社制作である旨繰り返し表示していたこと、控訴人会社名義のタグが付されていたこと等を総合し、控訴人会社自身が制作または制作指示したものと推認して、法19条1項5号ロの適用を否定した。推定覆滅割合については、販路の相違は既に考慮済みであり、売上高・広告費ともに被控訴人が圧倒的に上回る以上、控訴人らの主張するインターネット通販におけるブランド力等を更なる覆滅事情として考慮することはできないとした。本判決は、婦人服という流行要素の強い商品分野におけるデッドコピー規制の射程を示すものであり、形態上の小さな改変を加えても基本的・特徴的形態が一致すれば実質的同一性が認められること、また「仕入品である」との抗弁を排斥するには客観的証拠の提出が不可欠であることを明らかにした実務上重要な事例である。