保険医療機関指定取消処分取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 医療法人である控訴人が開設する奈良県内の病院について、近畿厚生局長が、健康保険法80条1号、2号、3号及び6号に該当することを理由として、平成25年10月1日をもって保険医療機関の指定を取り消す旨の処分を行った。控訴人はこの処分の取消しを求めて提訴したが、原審(大阪地裁)は請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案である。 本件病院では、平成19年から平成20年にかけて、10対1入院基本料、15対1障害者施設入院基本料及び回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準に係る届出及び定例報告において、看護職員の夜勤状況等について虚偽の届出・報告を行っていた。近畿厚生局は、施設基準調査を経て平成21年12月から平成24年7月まで15回・延べ20日間にわたり奈良県と共同で監査を実施し、不正請求(施設基準を満たさない診療報酬請求、医師の診察なしで行われたリハビリ・点滴注射等に係る請求、他医療機関の放射線撮影設備提供のみでの請求)、療養担当規則違反(一部負担金免除、診療録不実記載等)及び不当請求を認定した。聴聞手続を経て、本件処分に至った。 【争点】 主要な争点は、(1)処分理由の追加の可否、(2)不正請求1(施設基準違反)における違反事実の有無(特に夜勤時間算定における看護職員を看護補助者とみなす「本件みなし規定」の適用可否と本件修正届出の適否)及び故意・重過失の有無、(3)不正請求2(無診察治療)の該当性、(4)各規則違反・不当請求の主観的要件、(5)裁量判断の適否(比例原則違反、平等原則違反、他事考慮)、(6)手続上の違法(処分基準の明確性、理由付記、聴聞手続)である。 【判旨】 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人負担。 裁判所は、まず処分理由の追加については、本件通知書別紙に不正請求1以外の不正請求2、不正請求3、各規則違反及び不当請求の事実が具体的に記載され、根拠法令も個別に明示されていることから、これらすべてが処分理由とされており、処分理由の追加には当たらないと判断した。 施設基準違反(不正請求1)については、72時間基準は看護職員及び看護補助者の労働時間の適正確保を目的とするものであり、一般病棟で夜勤を行った看護職員を本件みなし規定によって看護補助者とみなして72時間基準の適用から除外することはできないとした。日本看護協会作成の自動計算機能付き書式も本件みなし規定の適用を想定していないとして、控訴人の主張を排斥した。 故意・重過失の有無については、法人代表者が内部的に権限を事務長、事務長代理、総師長に委譲していた場合、これらの職員の権限内の行為は法人の行為と評価され、独断とは評価できないとして、控訴人に故意又は重過失が認められるとした。医師の診察なしで行われたリハビリ・点滴注射に係る不正請求2についても、診察の頻度・内容が不十分であり医師法20条違反を免れないと判断した。 手続上の違法についても、監査要綱の処分基準は主観的態様と請求頻度に応じて区分されており行政手続法12条2項の趣旨にかなう具体性を備え、理由付記及び聴聞手続にも違法はないとした。裁量判断についても、比例原則違反、平等原則違反、他事考慮はなく、不正請求1のみでも保険医療機関指定取消処分の理由として十分であると判断し、原判決を維持した。