損害賠償等請求事件(本訴),損害賠償請求反訴事件(反訴)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、全国の商店や飲食店等の事業者情報を網羅的に掲載するポータルサイト「なびシリーズ」を共同で運営してきた個人事業主の原告と、被告会社(代表者B)との間の収益分配をめぐる紛争である。原告とBは平成18年3月頃から本件事業を開始し、原告がプログラム開発とシステム運用を、Bが企画や顧客対応を担当するという役割分担の下、収益から経費を控除した利益を折半するとの合意で協力してきた。平成19年11月にBが被告会社を設立した後も共同事業は継続され、平成21年1月には従前の合意内容を明文化した業務契約書が作成された。同契約書には、プログラムの所有は原告に帰属すること、収益から経費を差し引いた利益を二分すること、税務処理は各当事者が独立した事業者として行うこと等が定められていた。 事業開始当初から平成28年3月分までは、原告と被告の間で経費計上について協議のうえ合意する運用がされてきたが、平成27年5月頃に原告とBの関係が悪化し、被告は平成28年4月分以降、役員報酬、九州在住スタッフへの業務委託費、被告所有車両の減価償却費・自動車税・保険料、中小企業倒産防止共済等の保険料、B自宅の地代家賃・警備費用、税理士費用などを新たに経費として計上し、分配額を大幅に減額した。原告は未払収益分配金の支払を催告したうえで本件業務契約を解除し、平成29年4月1日に自らが管理するプログラムを停止したところ、被告はバックアップから同プログラムを複製してサーバ上で再稼働させ、同月23日まで使用を継続した。本訴は原告が未払収益分配金、解除に伴う逸失利益、プログラム著作権(複製権)侵害による損害賠償を求めた事案であり、反訴は被告が原告のプログラム消去行為は不法行為であるとして損害賠償を求めた事案である。 【争点】 主要な争点は、(1)平成28年4月分以降に被告が新たに計上した各経費項目について、本件業務契約上これを本件事業の経費として算入できるか(未払収益分配金の有無・額)、(2)本件プログラムの著作権が原告に単独帰属するか、それとも共同著作物として被告も利用権限を有するか(複製権侵害の成否)、(3)債務不履行解除に伴う逸失利益算定の基礎と相当因果関係の及ぶ期間、(4)契約解除後に原告がプログラムを停止した行為が自力救済として違法かである。 【判旨】 東京地裁は、本件業務契約は組合契約ではなく独立事業者間の業務提携を内容とする無名契約であると解したうえ、契約上の「経費」は本件事業に必要な経費を意味し、経費性に疑義があるものについては当事者間の協議と同意を要する旨の合意があったと認定した。そのうえで、被告が平成28年4月分以降に新たに計上した役員報酬、D氏・E氏に対する業務委託費、被告保有車両関連費用、企業保険料、自宅部分を含む地代家賃・警備費、事務消耗品費、接待交際費、税理士費用等はいずれも本件事業との関連性や事前協議・同意が認められないとして経費算入を否定し、従前から継続して計上されていたマネタイズパートナーへのコンサルティング費用(月5万4000円)のみ黙示の承認があったとして経費として認めた。その結果、平成28年4月分から平成29年3月分までの未払収益分配金は合計1148万2957円と算定された。 プログラム著作権については、本件業務契約書第3項が「プログラムの所有」は原告に帰属する旨規定していることや、実際に原告が開発したことから、本件プログラムは原告の単独著作物であり、解除により被告の利用許諾は消滅したと認定し、被告による複製・再稼働行為を著作権侵害と認めた。損害としては、逸失利益については事業環境の変化を考慮して2年分3039万7348円、使用料相当損害金については年間収益金の1%相当を基準として23日分の2万5357円を認容した。他方、原告のプログラム停止行為は著作権者による正当な権利行使にすぎず不法行為を構成しないとして、被告の反訴請求は棄却された。共同事業における収益分配と経費計上の合意内容の認定方法、及び業務提携解消時のプログラム著作権の帰趨について判示した事例として実務的意義がある。